津田賢一 (Kenichi Tsuda):植物はヒトが進化する以前から長い間進化してきたので、植物が作り出す化学物質が人間に薬効があるというのは多くの場合偶然の賜であると言えると思います。但し人間が薬効があると認識しそれを指標にして選抜や栽培をしてきた場合、植物が人間に薬効のある物質を作り出すこと自体は偶然だがその形質を人間が選択したと言えます。
例えば、陸上植物が持つサリチル酸という物質は植物において病原体への防御応答に使われています。これは植物が自然界で生き残るために重要な物質であると考えられています。100年以上前から人間はある特定の植物がこの痛み止めや抗炎症作用があると認識し、実際の物質が何かは知らずに使ってきたという歴史があります。現在サリチル酸の誘導体は痛み止めとして使われており、アスピリンとして広く市販されています。また抗炎症のための湿布薬として別の誘導体が使われていたりします。
植物は化学物質を作るということを進化させ、それは多くの場合植物にとって有用で有り、それを人間がたまたま利用してきたということになるかと思います。