犯罪報道の在り方は、とても難しい問題だと思います。
一定の報道が必要とされる根拠は、たとえ個人間の犯罪であっても、犯罪は多かれ少なかれ安全な民主主義社会を脅かすものであるからです。そのため、国家として刑罰を科す手続については、一部の軽微な事件を除き、原則として公開の法廷で裁判が開かれる必要があり、それは同時に公平な裁判を受けるための被告人の権利でもあるとされます。したがって、警察等の公的機関が一定の時点において報道発表を行うのは、悪質重大で起訴が見込まれる、すなわち公開の法廷で裁判が行われる可能性が高い事件や、社会的関心が高く、民主主義社会における議論に資する事件に限定されているものと思われますし、メディアも基本的には同様の考えに基づいていると思われます。ただ、犯罪は市民の好奇心を刺激し、その報道がメディアの経済的利益につながる側面も否定できません(サスペンス映画が人気を集めたり、ミステリ小説が好んで読まれたりもしています)。そのため、事案によっては、被疑者や被害者のプライバシーを過度に暴くなど、社会としてあるべき報道の限度を逸脱していると思われるようなものもあります。過去には、そのような報道を行ったメディアが、刑事裁判を受けた人などから名誉毀損等を理由に損害賠償請求を受け、敗訴したような事案も存在します。お尋ねの問題意識は、いずれもごもっともなものであると思います。
2 years ago(2 years agoUpdate)