福島真人:呪術というのは世界がどれだけ不確実か、そしてそれをいわば文化的にどう制御するか、という感覚と密接に関係しているので、例えば不安定な自然環境に依存する社会(例えば狩猟採集や農業のように、成果がかなりアドホックな場合)では、こうした自然環境の不確実性に対して、文化的に構築された複雑な手続きがその対象に影響がある、と考えられてそれを用います。その意味では儀礼の体系も広い意味での呪術的なシステムの一部と定義できるかもしれません。
他方、マックス・ウェーバーのような社会学者は、こうした不確実な自然にあまり依存しない産業社会は、そうした思考からより合理的なものに代わる、というので「呪術の園からの解放」といった言い方をしました。しかしこれもちょっと極端で、精密な様式としての呪術が衰退しても、人生における不確実性がなくなることはないので、ミクロに分散した呪術的思考や実践はあらゆるところに残存します。おまもりからゲン担ぎ、近親の重病の時の祈念、会社の屋上に神をまつっている企業等、いろいろです。ただし呪術体系はそれぞれ独自なので、他から見るとエキゾチックで、それゆえ観光資源になったりもします。