回文構造が制限酵素の標的になりやすい理由はDNAが二本鎖だからです。DNA切断反応は一つの鎖ごとにおきますが切断が一本鎖だけだと直ちに修復されるため、細胞内に侵入したウイルスDNAを排除するためには両方のDNA鎖を一気に切り離してしまう必要があります。二本同時に切断するためにはDNA切断酵素を回転対称の二量体にして回文構造の配列を切るようにすることが合理的なデザインだったと言えます。

　そうならばご指摘のようにウイルスは回文構造を回避するようなゲノム配列を選べばいいはずです。しかし１６種類ある４塩基配列の回文の中には開始コドンを含むCATG (NlaI), 終止コドンを含むTTAA (MseI), CTAG (MaeI) や多くのアミノ酸コドンが含まれます。これらを回避してたんぱく質の読み枠を作ろうとすると蛋白質デザインの自由度とウイルスの競争力を大きく損うと予想されます