小田部正明 (Masaaki Kotabe):マーケティングを4P(Product, Price, Promotion,
Place/Distribution)の一つ一つに焦点を置くと、多分いろいろな事例が挙げられるのでしょうが、ここではマーケティング戦略全体からみて過去100年くらいで最も成功した事例の一つを紹介します。南アフリカに本拠を持つDe
Beersのダイヤモンドの戦略が挙げられます。実は、ダイヤモンドはそれ程希少なものではなくルビーやサファイアの方が遥かに希少であり、重さ当たり(カラット)で計算するとルビーやサファイアの方がダイヤモンドより高価です。100年くらい前は、ルビーやサファイアの人気の方がダイヤモンドよりも高かったのも事実です。De
Beersは南アフリカでダイヤモンドの大鉱脈を発見し1888年に発足しました。20世紀の後半まで世界のダイヤモンド生産高の70-80%をコントロールしていました。ある意味では独占に近いです。第1に、その実質上の独占力を使い、ダイヤモンドの供給を極限に減らし、ダイヤモンドの希少価値を上げる戦略をとりました。マーケティングの観点からすると、お客さんがその希少な商品に特別なニーズを感じなければ、希少とはいえ値段は上がりません。そこで第2に、貴方の質問に答える形になりますが、1947年に「A
Diamond is
Forever.」(ダイヤモンドは永遠に。)というスローガンを世に送り、それが成功してダイヤモンドがルビーやサファイヤを超え、宝石の最高峰のものと見られるようになりました。それに続いて、De
Beersが主催した1953年のMarilyn Monroe主演の「Gentlemen Prefer
Blondes」(紳士は金髪が好き)という映画の中で「Diamonds are a Girl's Best
Friend.」(ダイヤモンドは女の子のベストフレンド)と言う歌を歌ったのが切っ掛けで、消費者の間でダイヤモンドが最高峰の宝石であることが確実となった。この2つのスローガンは現在でも使われている。勿論、上記の戦略とともに、De
Beersのダイヤモンドを売る店舗数も世界的に限ることにより、さらに希少価値のイメージを維持しています。