磁石って分子レベルに切っても 磁石なんですか?
回答(1件)
- 橋本 省二
- 学者
素粒子物理学。高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所で素粒子物理学の理論的研究。特に、量子色力学のシミュレーション研究。著書に『質量はどのように生まれるのか』(講談社ブルーバックス, 2010)191
関連する回答
- 全宇宙の事象をシミュレーションできるシステムは実現可能でしょうか。この世界は本当に現実なのか。先日買ったサマージャンボが当たっていたら人生は変わっていたのに。私だってそんなことを思うことはあります。では、宇宙の素粒子すべてをシミュレーションで再現できるかどうか考えてみましょう。「ラプラスの悪魔」のことをご存知のようなので問題は量子論ですね。 量子論の基本原則は、あらゆる状態はすべて同時に存在しているということです。状態をあらわすのは波動関数で、いろんな状態をあらわす波動関数を重ね合わせたものが現実に対応しているわけです。実際に観測するとそのどれかの状態がある確率で実現したりしますが、背後にはすべてを重ね合わせた波動関数があり、そのシミュレーションは波動関数の時間的変化を追いかけることになります。そのためには、可能なあらゆる状態を考え、重ね合わせの様子がどう変化していくかを見るわけです。 宇宙全体はちょっと大変ですから、粒子が10個だけある宇宙を考えてみましょう。しかも、それぞれの粒子が取りうる状態は2つだけということにします。この宇宙の取りうるすべての状態を数え上げると2の10乗、つまり1024個になりますね。波動関数は1024個の状態を任意の割合で重ね合わせたもので、それが時間とともにどう変化するかを見ればいいわけです。これなら計算機を使えばできそうですね。では、粒子数が100個だとどうでしょうか。取りうる状態の数は2の100乗。計算してみると10の30乗くらいです。現在最速のスパコンはエクサフロップス(毎秒10の15乗回の計算ができる)にちょっと届かないくらいの性能ですので、この数の状態を扱うのはすでに大変そうです。 本当の宇宙は素粒子100個でできているわけではありません。もっと多いですね。数グラムの物質の中にある原子・分子の数はアボガドロ数くらい。つまり10の23乗にものぼります。地球は10の27乗グラムくらい。太陽は地球より10の5乗くらい重い。銀河にある太陽みたいな星の数は10の12乗くらい。宇宙にある銀河の数は10の12乗くらい。全部かけると、宇宙にある原子の数は10の80乗くらいですか。しかも、一つの素粒子がとる状態は2ではなく、その位置や速度などを考えると無限個と言ってもいいくらいです。それではあんまりですから、仮に100万個としておきましょうか。10の6乗。そうすると宇宙のすべてをあらわすのに必要な状態は100万の10の80乗。つまり10の480乗になってしまいました。480桁の数です。どうしましょう。かなり大変です。 こんなときのために量子コンピュータがありました。量子コンピュータは、複数の状態を同時に扱って計算ができるマシンです。10個の量子ビットがあれば2の10乗個の状態を扱えることになります。現在実現できているのは数十個の量子ビットをもつマシンですが、将来はもっと発展するはずです。量子ビットが1つ増えると扱える状態数は2倍になります。これなら行けるかもしれません。でも、よく考えてみましょう。いまシミュレーションしたいのは宇宙にある素粒子すべてです。その状態をすべて扱うには、宇宙にある素粒子の数と同じ(あるいはそれ以上)の量子ビットが必要になりそうです。宇宙のシミュレーションをするのに宇宙のすべてを使う必要がある。これは一体どういうことでしょうか。もしかして私たちの住む宇宙はシミュレーション? あれ? 私にもよくわからなくなってきました。
- 3
- 21
- 研究をしながらさまざまな事情でお金も稼がなくてはいけないのですが、副業的なものはできるのでしょうか。研究者も研究と教育によって,お金を稼いでいます.決して裕福ではありませんが,一応生活できるレベルの対価をいただいているものと思います.研究を行うにはお金がかかります.そのために,研究者は研究費を申請し,厳しい審査を受けて,年間数百万円から数千万円の研究費を受けることがあります.しかし,これは研究費であって,研究者が生活の為に用いることは,日本では法律で厳しく禁止されています.しかし,海外例えば米国,中国,ロシア,ヨーロッパなどでは,研究費の一部を研究者の給与の一部として,研究者の生活に使用できますので,このような国にゆけば,良い研究計画を申請し,認められ研究費が受理されれば,ある程度生活も楽になることがあります. このように日本では,研究者が生活費としてのお金を稼ぐことに様々な制約があります.それを超えて収入が必要な場合は,講演活動や執筆活動,書籍から印税を得るのも一つでしょう.また,公の研究・教育機関では兼業も可能ですが,その場合には,本務に影響しないことなど,機関や国の許可が必要になります.また,利益相反(Conflict of interest)がないことが必要になります. 稼げる研究者というのは,どのような意味でしょうか.大きな研究費を獲得できる研究者は,大学では稼げる研究者とみなされますが,その研究者は,研究費を自身の給与など生活費に使用することは厳しく禁止されています.日本にいる限り様々な法律の制約から,生活のために大きな対価を得るのは無理ではないかと思います.米国などに移って,その国の法律にしたがって,企業との共同研究を行うのがもっとも確実であろうと思います.この場合でも利益相反がないことが非常に重要になります.
- 1
- 8
- 場の量子論を学ぶのに役立つ、良い本やその他の参考資料はありますか?私が最初に場の量子論を学んだ時のことを思い出しました。第2量子化とか、訳の分からない話が出てきて、難しいというよりも、どうしてそんなことをするのかわからなくて悩んだ記憶があります。きっと当時の私みたいに入り口に立った方だと思って回答してみます。 場の量子論を学びたいと思ったということは、すでに量子力学を学んだところですよね。粒子が2つ、3つ、あるいはもっとたくさんあって互いに相互作用すると、その量子力学は極端に難しくなるのは想像できますか? とても解けない。もっと簡単なやり方はないか、ということで場の量子論が登場します。ややこしい問題を簡単な形に書き直して量子力学を適用するわけです。というわけで、実はそんなに難しい話ではありません。 とりあえず必要な数学はフーリエ変換ですね。それと量子力学の基礎がわかっていれば、場の量子論のエッセンスを学ぶことができます。 もちろん、どんな分野も突き詰めていくと、深く、そして広くなります。それに応じて必要な数学も増えていくでしょう。複素解析とか、微分幾何とか。でも、すべて学んでからと言っていては、いつまで経っても先に進めません。まずは挑戦してみて、わからなくなったら戻ればいいのです。 独学でも学びやすい教科書の一つとして、Greiner, Reinhardt, "Field quantization" と、同じ著者のシリーズをあげておきます。導出が丁寧ですので、計算を一つ一つ追うのもやりやすいかと思います。
- 1
- 6
- 原子の半減期は、その分子によって変わるのでしょうか?原子核の半減期ですね。陽子と中性子がかたまりをつくった原子核は、それらの間にはたらく引力(核力)と陽子の間にはたらく電気的な反発力がバランスしてできている微妙な状態です。うまくくっついていることもあれば、不安定で時間が経つとより安定な状態に移っていくこともあります(それを特徴付けるのが半減期ですね)。ウランのように大きな原子核では、分裂して他の原子核になったほうがエネルギー的に安定するため、一定の確率で崩壊が起こります。他にはアルファ線やベータ線を出して変化する場合もありますね。 これはすべて原子核の話です。原子核の崩壊は、原子核の中心から遠く離れて回っている電子にとってはあずかり知らぬ話で、さらに別の原子と作って化合物を作っているかどうかは無関係です。ですから、答えは「半減期はどんな分子を作っていても変わらない」となります。 ただ、微妙な話はあり得ます。原子核の遷移で放出されるエネルギーが極端に小さくて、分子の結合エネルギー(電子ボルト(eV)くらいの大きさですね)になることがあると、分子になっているかどうかによって変わることもあるでしょうね。そんな例はほとんどなく、通常は原子核の遷移のエネルギーは、分子の結合エネルギーよりも1000倍とか100万倍とか、とても大きいので、分子であるかどうかは問題にならないのです。核エネルギーが化学エネルギーよりはるかに大きいことからもわかりますね。
- 5
- 4
- コーポレートガバナンスがしっかりしている企業と、そうでない企業の違いはなんですか?基本的には会社の経営に従事する取締役会がしっかり機能していることが重要です。社長をはじめとする社内取締役と社外取締役で構成されています。とくに社外取締役が企業とは独立した人で様々な角度から経営陣と経営の在り方を議論すると同時に、経営陣をモニターしていくことが期待されています。社内で問題があると思われる案件があれば社内の人からそうした情報が経営陣に届くような仕組みも必要です。上場企業であればコーポレートがバンスコードにそって経営体制を改革していくことが期待されていますが、形式的な改善だけにとどまっていて実質的な経営体制が変わっていない企業であれば、不祥事を未然に防ぐことができないケースもあります。企業の規模や業績と必ずしも一致しませんが、大企業であれば海外投資家も多く、情報開示も要請されておりなにか問題があれば厳しい説明責任が問われることが多いように思います。
- 2
- 12