小川仁志:大いにありだと思います。グーグルなどの巨大IT企業では以前からこうした問題が出題されているようですね。つまり、まだ定まった答えのないような問い、あるいは絶対的な答えのないような問いを出題することで、その人の地頭力を試すわけです。こうしたイノベーションを起こしたい企業にとっては、知識を持っている人より、創造的に思考できる人の方が重要ですから。その場合、正しい答えは不要で、新しい答え、いわば「ハッとする答え」こそが求められるのです。私もかねてから、そうした問いを高校や大学の受験にも用いるべきだと訴えてきました。実はオックスフォードやケンブリッジなどのイギリスの名門大学でもそうした出題がされてきています。具体例は『オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の入試問題 あなたは自分を利口だと思いますか?』(河出書房新社)をご参照ください。では、こうした問いに対して、どのように準備し、どのように思考すればいいのか? 私は哲学が役に立つと思っています。哲学は何の制約にもとらわれず、逆にいうとあらゆる物事を総動員して思考する総合格闘技みたいなものです。だからびっくりするような技が繰り出されますし、それによって得られる答えもびっくりするようなものになるのです。私はいつも常識を超えて考えることだといっていますが、だからこそ「ハッとする答え」が生み出されるのです。ここまでいうと自分でハードルを上げ過ぎなのですが、潔く私の回答イメージをお示ししておきましょう。メタバースの空間でがれきの下敷きになっているわけですよね? 普通はメタバース上でなんとかしようと考えるでしょうが、まずそこが常識を超えてません。メタバースはあくまで仮想空間なので、現実の世界が外部にあります。そこからできることを考えます。ということで、サーバーの電源を切って、根底から覆して助けます。昔ファミコンで負けそうになって、ソフトを引き抜いたのを思い出します……。