クーロンの法則で働く力、電磁気力のことですね。静電気で髪が逆立つのを見て、この力が大きいと思うかというとそんなこともなさそうですよね。でも、鉄くず工場で鉄をくっつける巨大な磁石を見たらどうでしょうか。大きな鉄板をバチンとくっつけてしまいます。あれはとても強そうですが、これも同じ電磁気力の一つの現れです。

そもそも、力が強いか弱いかは、比べる相手がいないと何とも言えません。ですから、ここでは重力と比較することにしましょう。私たちの体はもちろん、地上のすべてのものは地球の重力から逃れることはできません。山登りでへとへとになってみるまでもなく、私たちが感じることのできる重力。実のところ、あれは電磁気力に比べるとゴミみたいに小さいんです。どういうことでしょうか。

考えてみてください。東京スカイツリーはもちろん、背の高いビルや近所の家々も、すべて重力に逆らって立っています。これらはすべて電磁気力のおかげです。鉄骨が硬いのも、木の柱も、石も土も水も、私たちの身の回りのものがこういう形になっているのは、あれはほとんどすべて電磁気力のおかげです。原子を作る力も、原子が複数くっついて分子を作るのも、原子をいっぱいならべて金属を作るのも、すべてです。私たちの体が重力でつぶれてしまわないのは、電磁気力が重力よりもはるかに強いおかげなのです。

では、具体的に比較してみましょう。ここに陽子を2個用意します。陽子は質量をもちますのでその間には重力が働きます。引力です。陽子は正の電荷をもちますので、2つを近づけるとクーロン力が働きます。斥力です。どちらが強いでしょうか。ご想像の通り、クーロン力です。では、クーロン力は重力と比べてどれくらい強いでしょうか。100倍?それとも1万倍? いいえ。その違いは36桁です。そんな大きな数をどう呼ぶのか私は知りません。日本の国家予算は100兆円。これでも15桁でしかありません(合ってます?)。36桁がどのくらい大きな数か想像できるでしょうか。

重力と電磁気力の大きな違いは、重力は質量に対してはたらき、質量には負の数がないこと。物質が増えれば増えるほど足されていきます。一方で、電磁気力の源になる電荷には正と負があり、正負を集めると打ち消し合います。あらゆる物質は、その電荷がほとんど打ち消し合うように作られているために、全体として働く力は小さくなってしまうわけです。

2022/01/15Posted
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