Hidezumi Inoue:まず「マイナンバーカード周りの問題」を整理しましょう。
マイナンバーカードの問題には(今わかっている範囲では)
* システムの問題
* 運用の問題
があります。
具体的にいうとコンビニシステムの問題は「システムの問題」なのでシステム的に解決ができます。つまりバグを修正してテストすればいいわけです。
一方で運用の問題は複雑です。運用の問題は現在3つ出てきています。
* 公金口座の問題
* 健康保険証の問題
* 顔写真取り違えの問題
このうち公金口座登録の問題は比較的解決が容易です。問題の構造が簡単です。
一方で健康保険証の問題は現在は「マイナンバーカード」の問題になっていますが、どうやらバックエンドのシステムに問題があることがわかってきていますが、病院や地方のお医者さんの調査をマスコミが雨垂れ式に伝えるという状態です。さらに医療従事者も「オペレーター」となりシステムの一部になるのですが彼らがシステムをうまく扱えていないようだということも問題になっています。そもそも「システム全体」がどの程度の規模になっているのかがわかりません。誰も範囲を把握していないからです。
最後の「顔写真の問題」ですが、窓口で確認するはずが「本人も気がつかずに持って帰ってしまいあとで間違っていることに気がついた」ということです。そもそも「窓口できちんと確認するだろうし、もらった人も自分の顔くらいはわかるだろう」という前提が成り立たないのです。マイナンバーカードがPhotoIDだったことを考えるとこれはかなり致命的なミスになりそうですが件数自体は1組2件報告があるだけです。
埼玉県美里町は19日、別人の顔写真をつけたマイナンバーカード2枚を誤って交付したと発表した。2月28日に町役場で交付を申請した町民の女性2人の顔写真が入れ替わっていた。受け付け時の確認不足が原因で、顔写真以外の個人情報は2人とも申請者のものだった。受け取った後の今月18日に町に連絡があり、ミスがわかった。
ここまで読めた人は相当根気のある人だと思いますが、このようにまずは問題を特定(nail down)した上で一つひとつ対策を検討しなければなりません。
実際に国会議員が何をしているかというと
* 真摯に反省して一生懸命問題を解決します
* とにかく急いで色々やろうとした政府が悪いんじゃないですか?
という話し合いをしています。
* 立民 安住氏 マイナンバーでトラブル “国会で集中審議を”(NHK)
さて、最初のご質問は「なぜこんなに下手なのか?」ですよね。おそらく政府は「文書による事務処理」には慣れていたがコンピュータによる事務処理には全く歯が立たなかったということは言えそうです。
しかし「事務処理」という点は同じでそれが印刷された文書からコンピューターに移っただけなんじゃないかと思えますよね。何か仕事を理解するときには「外形的なアプローチ」と「内面的なアプローチ」があります。
* 内面的なアプローチ = なぜこうしなければならないのか?
* 外形的なアプローチ = 何をどう手続きするのか?
電卓に例えると「1と1を足すとどうして2になるかを理解する」のが内面的なアプローチで、1+1=と押すと答えが出てくると考えるのが外形的なアプローチになります。内面的なアプローチでは理解に理解がかかります。一方で手順だけ覚えるのは簡単です。単に暗記すればいいです。
同じ事務処理の形を変えただけでどうしていいかわからなくなるのは、おそらく日本人が効率を重視して外形的なアプローチにばかり気を取られていたからでしょう。
これは国会の議論が「一生懸命頑張る」や「とにかく要領が悪すぎる」に終始していることからも明らかです。つまり徹底して「なぜこういうことが起きたのか」という内面理解を徹底して避けるのです。
次の問題は「公共事業」の問題ということになっていますが、私は核は「課題に対処する方法」の問題だと思っていますので、以下二つの独立したことなる問題について、私からのお答えは差し控えさせていただきます。どなたか別の方が対処してくださるかもしれません。
ご質問は問題全体を特定しないままで「きっと公共工事が悪いんだろう」「官僚の発注の仕方が悪いんだろう」と決めつけていますよね。このような決めつけが色々なところで行われており、好き勝手に「あいつが悪い」とか「こいつのせいだ」みたいな話になっています。
主語を日本人にしていいかはわからないのですが内面理解を徹底して避けて表面上の犯人探しをするという安易なマインドセットが横行しています。「デジタル」だけの問題でもないと思いますがこれが議論や話し合いを難しくしているのではないでしょうか。