大谷栄治:確かに月は明るく輝いていますが,土や石など鏡とは異なるでこぼこの表面をしているのに不思議ですね.月が明るく輝いているのは,月の表面の特徴,地球の大気の特徴,月の明るさを感じる検出器つまり私たちの目の性質が合わさって明るく見えます.
月の表面の特徴ですが,月の表面が鏡のようならば,太陽の反射光は効率的に反射されますが,反射光は太陽に対して一定の方向に向いた光しか,私たちの目に届かず,その方向から外れれば明るく見えません.月の表面は土や石つまり細かな鉱物のデコボコの表面をもつ粒子からできていますので,その表面は太陽の光を乱反射します.そのために,どのような方向にも光が反射して,月がお盆のようにまるく輝いて見えます.鉱物が光を反射する割合を反射率といいます.反射率は,光の波長によって異なり,鉱物によって異なる特徴があります.これから鉱物の種類を推定することができます.このように月面で乱反射して地球に届いた月光は地球の大気を通ります.そこで,大気による散乱によって輝きも色も変わります.大気中の分子による散乱は,波長の短い青色が散乱されやすく長い赤い光は,散乱されにくいので,月の高度が低くなるにつれて大気を通る長さが長くなり波長の短い光は散乱されて弱まり,月は黄色,オレンジ,赤に変化し輝きも変化します.なお,月が明るく見えるのは,私たちの目の感度がよく,月明かりでもよく感知できることにもよります.
はやぶさIIがリュウグウに着陸しようとしたとき,着陸のリハーサルではリュウグウの表面が真っ黒で暗すぎ表面からの反射光を検知できずに距離が判らず降下を中断するなど着陸に苦労したことは,良く知られていることです.これは,リュウグウ表面を作る物質が炭素に富んでおり黒くて反射率が異常に小さく,距離の計測に必要な反射光を検知するのが困難であったことが原因です.https://www.isas.jaxa.jp/feature/hayabusa2/haya2_06.html