小田部正明 (Masaaki Kotabe):確かにデジタル技術(AIを含めて)は目覚ましく発展しています。そのような環境で、オンラインで商品を買う時も、消費者(お客)が実際にお店に行って(UX: User
Experience)いくつかの商品を手に触って比較しているかのような(UI: User
Interface)ことが徐々に可能になってきました。このデジタル技術が行きつくところは、貴方が言うようにUI・UXのコモディティ化で、どのオンラインショップに入っても消費者が同じようなバーチュアルな経験ができるようになります。つまりオンライン上で「売り場」の差別化ができなくなります。企業が競争に勝つには差別化が必要なことは当然です。その次の次元の差別化とは何かというのが、貴方の質問だと思います。それが何かは一概に言えませんが、消費者の消費の目的(パーパス)かも知れませんし、購買の雰囲気かも知れません。勿論、それ以外の消費者の気持ち等も考えられます。いずれにしても、オンライン・ショップが提供(操作)できる一方的な消費者・購買者向けのUI・UXではなく、個々人の消費者・購買者の感情が反映できる「場」が必要になると思います。例えば、私の場合、行先の温泉で美味しいお酒を飲んだ時にでた杯と同じようなものを雰囲気で買いたくなります。その雰囲気はオンラインショップでは自動的に前もってUXの代替シーンとして入力しておくの難しいでしょうが、消費者からどんな場所、雰囲気で購買したいかを入手することによって、消費者に応じたカスタマイズをした消費の「場」が提供できると思います。ある意味では、これもUXにはなりますが、違いはオンラインショップが事前に提供できる代替UXでなく、消費者から入手した情報を使ってその場でカスタマイズするUXです。勿論、それを提供するには更なるカスタマイズしたUXの入力が必要であり、これに開発のコストがかかります。ただそれに消費者が更に高い値段を付けてまで買いたいかどうかは分かりませんが、特定の商品(サービスも含めて)に限っては可能性があると思います。