Hidezumi Inoue:一例にキャスティングボートという現象があります。
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アメリカの議会を見ていると多数決の弱点がわかります。均衡状態に達すると多数決では物事が決められなくなります。多数派から少数の離反者が出ると多数派は少数派に転落します。この離反を防ぐために多数派の多数派は多数派の少数派に対して何らかの譲歩を迫られます。
これだけでは何のことだかさっぱりわからないと思うので具体例を挙げて説明します。
具体的には多数派の共和党が議長ポストを得るためにMAGA共和党院・フリーダームコーカスと言われる人たちにさまざまな譲歩をしています。結果的にマッカーシー氏は議長ポストを手に入れることはできましたが、今後少数の造反者が過激化すれば、おそらく共和党の穏健な支持者たちは共和党を支持しなくなると思います。かといって彼らが民主党に乗り換えるわけでもないですから、結局少数の極端な意見を持った人たちに振り回される結果になるわけです。
よく「キャスティングボート」などと言いますが、今回の増版はその最も極端な例です。
フランスではすでにマクロン大統領が率いる政権が少数与党に転落しており、少数派に転落したフランス共和党に年金改革でかなり譲歩しています。しかし国民の反対運動が盛り上がれば「解散も」と言う状態です。仮に共和党がこの時にマクロン政権を見限る動きを見せれば実際に議会が解散されてしまう可能性もあると思います。フランスの事例もキャスティングボートを握る少数派の動向次第で政治が大きく不安定化しかねないと言う状態になっています。
このように均衡状態において多数派は多数派内の少数派に振り回されるという状態に陥ることがあります。日本の自民党も派閥連合ですしそもそも連立政党です。同じような状態に陥る可能性がないとは言えません。
以下ご参考記事です。
* 【解説】 米下院議長はどうやって決まった……明らかになる造反組の委員会ポスト
* 反発必至のフランス年金改革
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