高木浩一:私の場合、ほとんどの研究は学生さんなしには成り立たなかったと思います。助手、助教の時など若い時は、自分でやらないと(実験など;自然との直接対話?)、学生さんとのディスカッションも成り立たないので、自分がメインで進めていたこともあります。しかし働き始めて5年過ぎたころからは学生さんと一緒に実験を行ったり、学生さんが実施した実験を元に、ディスカッションしながらいっしょに進めているような感じです。「必要」というよりは、家族、同志のようなイメージを持っています。(Read more)
澤田秀之:大学教員、研究者として、研究の成果が上がったり、面白い発見をしたりすることは当然、大きな喜びですが、それよりも弟子や学生さんが研究の成果を上げて研究者として成長していく姿を見られることが、何にも代えがたい楽しみです。自分で研究成果を上げることは、ともすれば自己満足的なことになってしまいますが、学生さんが試行錯誤をしながらも議論を通して面白い発見をし、研究成果に繋げながら成長していく姿を見られるというのは、本当に嬉しいものです。そういった意味で、学生さんが研究についてくれるということは必要なことですし、一緒に研究を遂行していくうえで必要な存在です。そもそもが、研究においては未知のことを探求していくことが目的ですので、学生さんの実験や考察を通した議論から、私たちも多くの学びがあり、これも面白いことです。 昨今の社会情勢や経済状況が影響しているのかもしれませんが、博士課程に進む学生さんが少なくなっているように思えます。是非、日本の大学でも、研究者、学者、大学教員を目指して自分自身の研究分野を作って行こうという気概を持って研究を進める若い方々が増えていって欲しいと、切に願っています。(Read more)
佐藤克文:学位を取って、ポスドク時代を経て、運良く大学の教員になることができました。毎年色々な経験を積むことで、知識は蓄積し、研究者として円熟しつつあることを実感(錯覚?)する日々を過ごしています。幸いにも毎年大学院生が研究室に入ってきてくれます。多くの学生は未熟で、色々やらかしてくれます。私が考えもしなかったような発想から、色々なことを試みて、その多くは案の定うまく行かないのですが、中には私の予想を良い意味で裏切り、私には絶対できなかったと思われる発見をしてくれる学生がたまにいます。 たとえば・・・ バイオロギング手法が発達し、鳥の飛翔経路や羽ばたき行動は秒単位で測定できるようになりました。しかし、鳥が海上で経験しているであろう風は残念ながら測定値が無い場合がほとんどです。人工衛星を使った風測定もなされてはいますが、1日2回ほどしかデータが無く、鳥の行動を解析するには不十分です。海鳥に装着したGPSで飛翔経路を1秒間隔で測定し、その軌跡を詳しく解析することで鳥が経験した海上風を推定するという手法を学生が提案してきたとき、最初は信じられませんでした。しかし、推定値を測定値と比較すると、これが一致しているのです(Yonehara et al. 2016 PNAS)。5分間隔で推定される鳥の飛翔経路上の海上風は、鳥の行動学を進めていく上で重要であるだけでなく、気象分野の研究者にとっても重要なパラメータとして役立つ事が期待されています。 あるいは、無鉄砲な大学院生が漁師さんにお願いにいったおかげで、定置網で捕獲されたウミガメやマンボウを私達のバイオロギング調査のために提供してもらえるようになりました。 研究を進めていく上で、学生たちは本当に必要な存在であることを日々実感しています。(Read more)