Jun Mukai:「ポケモン」(に近い発音)として読んでもらいたいからでしょう。 英語では綴りから発音を決めるルールがなく、逆に発音を表現するための綴りもありません。発音記号とか、発音を説明するための表記パターンはありますが、ポケモンのような固有名詞というか独自の用語をどう表記するかは難しいのです。 とくにeは発音が特殊で変化しやすいのです。アクセント記号をもたないpokemonの場合、pokeというふつうの単語にひっぱられてpóukmɑ́n (ポウクモン)のように発音される可能性が非常に高いです。ところがアクセント記号のあるéはしっかり発音する(ことが多い)という慣習があるので、pokémonのように書けば、póukとはならず「ポケ」に近い発音をすることが誘導できます。 特にポケモンがリリースされたころの時代でいうと、こういう単語をどう発音するかということを伝えることはかなり難しく、ゲーム内の画面も取扱説明書もほぼ文字情報しかない状態だった一般消費者が大半だったことでしょう。ゲームには音声その他がなく、それ以外に音・会話などで一般消費者にリーチする手段はありませんでした。その後にはアニメもありましたし、もちろんテレビコマーシャルなどでそれとなく伝えることは可能でしょうが、それでもどう発音するかをうまく誘導するのは難しいでしょう。それよりは綴りを工夫することに意味があります。 たとえばハワイにはポケという魚料理がありますが、これも発音を誘導するためにpokéと書くことがあります。また日本酒もsakéのように書くことがあります。どちらも今では英語圏で知られているのでeのアクセント記号は省略することも多いですし、それで発音を間違えられることもほとんどありません。しかし、それほど知られていないころであれば、こういう記号で誘導しないと正しく発音してもらえないということがよくあるのです。ゲーム内の固有の言葉であるポケモンのようなものであれば尚更、そういう誘導が必要になります。 というわけで、きちんとポケモンと発音してもらいたかったからでしょう。(Read more)