白石直人:研究者がプライベートの時間を確保できないのかは、第一にどの分野か、第二にその人が院生/ポスドクか大学スタッフなのか、に大きく依存する話だと思います。 分野依存性ですが、例えば僕の分野は理論物理なので、家でもどこでも研究できます。研究時間は極めてフレキシブルに確保できるので、夜に研究している一方で、日中は研究以外のこと(遊び、大学の雑務、家の用務、今だと育児など)に時間を使うというの場合も少なくないです。一方、例えば実験系だと大学でないと実験は出来ないですし、生物を飼育しているタイプの研究室だと正月でも世話をしに行かないといけないという話も聞きます。また、文化人類学の研究をしていた人で、院生時代に3か月フィールドワークでアフリカの奥地に行っていた、という人もいます。 また、院生/ポスドク期は研究だけしていればいいので、あるときは数週間まとめた時間を使って遊んで、その代わりその前後は集中的に研究する、ということも出来ます。「大学院生に土日はない」かもしれないですが、代わりに「決められた仕事時間もない」場合もあります(研究室によってはコアタイムがあったり毎週のミーティングがあったりするので、この辺は個別事情も大きいです)。しかし、ある日の平日日中丸々遊ぶことは出来る場合が多いと思うので、空いている美術館に行くなど、時間の融通が利くことを利用する方法は色々あります。一方、大学スタッフ(助教以上)になると授業、研究室運営、会議などの大学運営関係の業務が多数入ってきます。これらは時間が細かく定められているので、数週間遊びに行くようなことは出来ないです。 最初の「いかにプライベートの時間を確保するか」という問題ですが、むしろポスドクまでの期間は「いかに緩まずに研究するか」の方が問題である人も少なくないと思います。研究職は評価は完全な成果主義で、時間で縛るのではなく「研究成果が出れば勝ち」なので、サボろうと思えばいくらでも研究せず遊ぶことも出来てしまいます。365日中364日遊んでいても、研究した1日で研究成果が出れば評価される世界ではありますが、そんな人はまずいないので、遊びすぎてしまうのはマズいです。それとは真逆の「ずっと研究し続けてしまう」という人は、研究が楽しくて仕方がないのならそれでもいいのかなと思いますし、成果が出ないことへの強迫観念で研究しないとと思い詰めている人は、研究が進んでいないなと思うときは適宜頭を休ませることも兼ねて遊ぶといいのではないかと思います。(Read more)
加納 学:数日ならともかく,1週間とかそれ以上休もうとすると,かなり前から計画的に行動しないといけません.そういうとき,私が意識して実行しているのは,とにかく自分のスケジュールをブロックして,何も仕事を入れず,「いつからいつまで休むので連絡取れなくなります!」と全方面に宣言することです.そうすることで,共同研究も含めて一緒に仕事をする人達に,覚悟(?)しておいてもらいます. 質問者さんのお兄さんが「大学院生に土日はない」と仰るのは,指導教員からそのように言われたからでしょうか.私が学生(学部生と大学院生)に伝えているのは,まったく違っていて,在学中に色々な経験をせよということです.そして,学生が土日に休む必要あるの?とも言います.わざわざ混雑する休日に休まなくても,平日に休んで遊びに行けばいいわけです.そういうことができるのも学生のうちです.このあたりのことについて,具体的には, 「大学新入生に伝えた(い)こと」 https://note.com/dr_kano/n/n426c0847983d に書いてありますので,興味があれば読んでみて下さい. また,日々のプライベートな時間を確保するためには,毎日〇〇分は△△をするというように決めてしまいます.△△は読書だったり,運動(私の場合はサイクリング)だったりしますが,具体的に決める必要はなく,とにかく,毎日あるいは毎週,これだけはプライベートな時間にすると決めてしまうわけです. 優先順位を決めることは,一般的に,重要です.ドラッカーなら劣後順位(何をやらないか)を決めろですかね.プライベートの時間を確保したいなら,その優先順位を高くして,有限の資源である時間をそこに割り当てることを意識して実行するのが有効かなと思います.(Read more)
鵜山太智:時間や人手の制限というのは、分野や研究者のキャリアステージによって大きく依存すると思います。そのため一般的に言える話ではないような気がしますが、僕がプライベートの時間を確保するためにやっている事としては ・観測やデータ解析でコンピュータを走らせている時間に他の雑用を終わらせる ・分からないところは自分で悩まずさっさと共同研究者や詳しそうな人にヘルプを求める というところですかね。 前者はただただマルチタスクで実働時間を極力減らしたいと考えているだけなので、あんまり言うことはないかなあと思います。解析が終わらないと話が進まない時は、コンピュータに全任せのこの時間はやる事がなくて、その日は仕事終わり、みたいな事もたまにします。 後者についてですが、研究をしている以上答えがどのように出てくるのかは予測しづらく、自分で手を動かしても全くの徒労に終わることもあります。僕は徒労に終わってしまうのが本当に嫌で、最低限自分で手を動かすのに必要な知識は勉強しますが、それで無理だったら詳しい人にすぐ助けてもらうようにしています。もちろんヘルプをお願いする人が忙しくて手伝ってもらえず結局自分でやるという事もありますが、かなりスムーズに話が進むことも多いです。教えてもらえれば結果がうまくいかなくてもその過程に必要なスキルは上達しますし、自分で一から勉強するより時間もかかりません。 あとアメリカに来てから感じるのは、(ワーカーホリックもいますが)休む人は堂々と休んでいます。その文化にはうまく乗っからせてもらっています。休みすぎたら当然白い目で見られますが、ある程度進捗を見せている中でちょっと休むと言っても何とも言われないんですよね。また逆に暇でやることない休日とかは普通に研究進めます。僕のポジション的に毎日の時間の制約やシステムとかは特にないんですが、自分の中で勝手に暇な休日出勤して余裕出たタイミングで代休取っているような感覚です。ある意味自由ですが、逆に全て自分の責任で何もかもが自分に却ってくるので、自律しておかないといけないですね。(Read more)