私の考えでは「多様な方法でやるのが良い」です。

紙のゲラでなければならないとか、タブレットにタッチペンでなければならないとか、一つの方法にこだわるのは良くないと思います。そのココロは、多様な方法で読むならば、多様な誤りを発見することができるからです。

私の場合には、紙のゲラも読みますし、PDFをパソコンで読みますし、PDFをiPhoneで読むこともあります。執筆のときにはAmazon Pollyなどのサービスを使って音声合成による「読み上げ」を行って「耳で校正」する場合もあります。

多様な方法で読むならば、一つの方法では気付かなかった文章のもたつきが見つかったり、用語の使い方が一貫していない箇所が見つかったり、あるいは新たな加筆事項を発見したりします。できるだけ多くの角度から、できるだけ多数の観点で読み返すことが、原稿の確認では大切になります。

もちろん、多様な方法で読むとはいっても、修正を取りこぼしたりするのは困りますから、システマティックに読んだ結果を原稿にフィードバックするようなワークフローを定めていくことが大切になるでしょう。私は、ゲラを読むときにはスプレッドシートを用いて「どのような読み方で、どの章を読み終えたか」という管理を行っています。そうしないと、思い付きや行き当たりばったりであちこち読むことになってしまい、本全体の品質向上になかなか結びつかないからです。

「原稿の確認を紙で行うか、タブレットで行うか」というのは原稿を読み返すための、ほんの一部にしかすぎないのです。

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拙著『数学文章作法 推敲編』では「ローラー作戦」のように、効率的に多様な推敲を行うための方法を紹介しています。以下ではPDFが試し読みできます。

◆『数学文章作法 推敲編』

https://www.hyuki.com/mw/

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