イナダシュンスケ:正確に言うと、東京というより日本全国がそうなった、という話です。 元々高級日本料理の世界は、関西が全国を制圧していました。その後日本が豊かになるにつれ、それは野に下ったのです。もちろん各地にローカル食はそれはそれで根強く残っていますが、全体として見れば、醤油や味噌一辺倒の味付けは影を潜め、味付けは全体に薄くなり、ダシや甘みが多用される、「関西化」が進んでいます。 ナショナルブランドの調味料メーカーは、家庭用も業務用もかつて東京に集中していました。1960年代まで、業務用合わせ調味料はあくまで「醤油に何かを加える設計」だったと言います。その後、それはむしろダシ成分や糖類を中心とする設計に変わっていき、それが業界で「味覚の関西化」と呼ばれているのです。 家庭用の「〇〇のタレ」的なものも、発売→関西で売り上げが振るわない→関西向けのバリエーションを発売→それが全国的にも人気を得る、みたいなパターンが結構あるようです。 東京は新しいものを取り入れることに積極的な文化的土壌がありますから、元々極めて強いローカル食文化があったにも関わらず、関西化は特に「ガンガン」進んでいるのだと思います。そんな関西化の流れから取り残された独特の食べ物を僕は「東京エスニック」とよんでいます。(Read more)