大谷栄治:マントルは高温高圧の環境にあります。地下を掘削するには、岩盤を削る掘削工具が必要です。これはダイヤモンド粉末を焼き固めた材料PDC(Polycrystalline
Diamond
Compact:多結晶ダイヤモンド焼結体)でできています。これらの工具は、温度に弱く地下の温度が高くなると柔らかくなり、掘削に適さなくなってしまいます。そのために地下のある深さを超える掘削には困難が伴います。これまで最も高温まで掘り進めることができたのは、岩手県の葛根田の地熱調査井で、深度3729mで500℃に達する高温の岩盤を掘削することができました。これは世界最高の掘削温度と言われています。最も深くまで掘られたのは、地下12kmを超えるものが最深であり、ロシアのコラ半島の掘削によって行われました。この地域は,地殻が厚く温度が低い場所(最深部で205℃)なので、このような深部の掘削が可能でした(1)。さらに深くまで掘削するには、高温でも硬さが減らない掘削材料を開発することが必要になり、現在使われているPDC(多結晶ダイヤモンド焼結体)より硬い工具が必要ですが、この開発は困難なのが実情です。
地球の中心まで掘り進めるには、6,300kmも掘り進める必要があり、そこの温度は太陽の表面温度の6000℃に及びます。このような極限条件まで掘削をすることは、まずは不可能だと考えられています。月や火星にゆくことは技術的に十分可能になっていますが、地球の中心に行くのは、現在のところ不可能だと思われます.
参考文献
(1) https://www.jstage.jst.go.jp/article/japt/82/5/82_324/_pdf