結城浩:AI自体が現在ホットな分野であり、誰にも予想がつかないほど量的にも質的にも急激な変化をしている状況ですね。言い換えると、たとえばこれからN年後に何がどういう状態になっているか、どれほどのことができるようになっているかわからないということです。ごく小さなNについてもそうだと思います。
AI自体がそういう状況ですから、いまいる人がどのようにすればAIを使いこなせるようになるかもわからないし、AIを使いこなせるかどうかもわからないし、「使いこなす」という表現自体が正しいかどうかもわからないといえます。
ましてやそれができる人材を育成するとなると、極めて困難な予想を三段階ほど積み重ねていることになってしまうと思います。
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さて。
それはそれとして、あえて現時点での私の直感を書いておくと「AIを使いこなす」というよりは「AIと共に問題解決をする」という表現が適切になると思います。
なぜそう思うかというと、コンピュータとの類比からです。コンピュータができたおかげで、正確な情報処理を高速に繰り返すという人間が不得意なことができるようになりました。それによって人間+コンピュータが解決できる問題が大きく変化しました。それと同様のことが(ただし質とレベルを変えて)人間+AIにも起きると思います。
そして人間が「AIと共に問題解決をする」と考えるなら、人間とAIの意思疎通がとても大事になると思います。それは人間が他の人間と共に問題解決をする場合と同様です。つまりは広い意味での「コミュニケーション」が大切になってくるでしょう。
現在話題になっているChatGPTとの対話においても、尋ね方一つで回答の品質がずいぶん変わります。もちろん「AIを使いこなす」という考え方で「こういうプロンプトを書けばこういう回答が得やすい」というテクニックは無数に生まれると思います。しかし、基本的には人間と同様に接して、質問者が適切な情報を相手(AI)に提供し、AIからの返答をよく吟味し、正したり軌道修正したりというやりとりが大切になるのではないでしょうか。
人間相手でもコミュニケーションを取る人がうまい人とそうでない人がいますが、それに似たような感じで、AIとうまくコミュニケーションをとって、共に問題解決をすることに長ける人も出てくるでしょうね。
以上、勝手な想像ばかりですが回答とします。