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日本語ならSOV型、英語ならSVO型、アラビア語ならVSO型、など言語によって語順が異なりますが、これはどのような原因から生じる違いなのでしょうか?

 「原因」はわかりません(私も知りたいです)が,類型論的,歴史的にみるとヒントはあります.

 世界の諸言語の基本語順を眺めてみると,(様々な統計がありますが)日本語型の SOV が48%,英語型の SVO が41%,ウェールズ語型の VSO が8%,その他の型が3%となっています.意外と日本語型の SOV が最も多いのですね.

 論理的には S, V, O の組み合わせとして6種類が可能であるなかで,トップ2の SOV と SVO だけで9割弱を占めるということは,言語の認知プロセス上「何か」があるということを示唆するように思われます.しかし,他の4種類のマイナーな語順が妨げられるわけではない,ということもまた非常に示唆的です.

 地理的な分布や言語グループによる分布を見てみますと,特定の語順が,ある地域や語族に偏って分布しているということもあるにはあるのですが,周囲の言語と異なる語順がポツンと孤立して存在している場合もあり,なかなか一般的な傾向を述べることはできません.

 さらにおもしろいのは歴史的に見た場合です.英語は現在でこそ SVO 語順をもつ典型的な言語ですが,千年ほど前の古英語の時代には語順は現在よりもずっと自由で,当時より SVO もありましたが,同じくらいの頻度で SOV もありましたし,その他のすべての語順も可能でした.しかも,さらに遡ったゲルマン語の時代には,日本語と同じ SOV が基本語順だったと考えられています.

 つまり,言語においては,時間とともに基本語順,あるいは語順の自由度が変わり得るということです.これは驚きの事実ではないでしょうか.

 ご質問は「日本語ならSOV型,英語ならSVO型」などである原因は何か,ということでしたが,現在においてそのような分布になっているということにすぎず,考慮する時代を変えれば事情も異なり得るということが分かったかと思います.むしろ,歴史的に語順が変わってきた言語を念頭に,なぜ変わったのか,なぜ変わる必要があったのか,と問うてみると,議論はもっとエキサイティングになってくると思います.

 参考までに筆者の hellog~英語史ブログ より こちらの記事 も合わせてご覧ください。

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堀田隆一

Scholar

 英語の歴史と歴史言語学を研究しています(プロフィールは https://bit.ly/3PnXWQ3 ).日々,慶應義塾大学文学部にて学生たちと「英語に関する素朴な疑問」について議論しつつ,著書,ブログ,Voicy ラジオ,YouTube などで情報を発信しています.毎日更新の「hellog~英語史ブログ」:http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/ , 毎日更新の「英語の語源が身につくラジオ」(heldio):https://voicy.jp/channel/1950 ,「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」(YouTube): https://bit.ly/3tbP3in,著書『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年),『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年).