古勝隆一 (Ryuichi KOGACHI):大学院に進学するとすれば、まずその入学試験に合格する必要がありますね。第一歩として、出題科目を把握し、過年度の問題を入手して、解いてみましょう。事務係に問い合わせれば、たいがいの大学では過年度の問題を手に入れられると思います。公開していないようであれば、先輩等のつてをたどって、ということになるでしょう。
私は大学院入試に直接関わっていないので、詳しいことはわかりませんが、複数科目について試験が行われる場合、どの科目も「ほどほど」以上の点数を取ることが必要でしょう。苦手な科目について、「捨てる」ひとがいますが、合計点で合否判定されることの多い、大学の学部入試とは異なり、大学院入試の場合は、白紙答案や最低水準に満ちていない答案の提出は、選考側によくない印象を与え、かんばしくない結果を招く可能性が高いと想像します。ご注意を。
そう考えれば、大学院入試に向けて、中国語の勉強をすればよいのか、英語の勉強をすればよいのか、答えは出ると思います。より不得意なほうを勉強すべきでしょう。
それとは別に、大学院進学後のことを考えれば、異なるアプローチが必要です。修士課程の院生は、自分の研究につき、戦略的に考えて行動する必要があります。どこに自分の研究の強みを見出し、論文に結実させるか、十分に考えておくべきである、ということです。
一般的に言って、母語以外の資料を使って言語や文化を研究しようというのであれば、取り組むべき資料や文献について、非常に詳しくなる必要があります。その習熟度は、青天井であり、どこまでも追究することが可能であると私は思います。ただし、「どの資料や文献に取り組むのか」は、自分で決めることができます。それに応じて、要求されるスキルのおよその方向は、おのずと決まってくるのではないでしょうか。場合によっては、中国語と英語以外が必要になるかもしれません。また一口に中国語といっても、時代や地域、ジャンルにより、千差万別ですから、何を研究してみたいのかによって、大いに変わってくることでしょう。
以上のように、試験と研究に分けて考えると、すっきりするのではないでしょうか。
余談ながら、英米以外の外国研究をする若者で、英語を「捨てる」ひとが、たまにいますが、どうしても苦手だというのでなければ、英語の論文でも読んで、しっかり勉強しておくとよいと思います。私は学生時代にあまり英語を勉強しなかったので、その後、必要が生じて、まとめて勉強せざるを得なくなり、ベルリッツに高い月謝を払いました。英語がいつか使えるかもしれない、必要になるかもしれない、というくらいの心構えで、あらかじめ勉強しておくべきであったと反省しています。