鵜山太智:ケプラー452b、NASAが打ち上げたケプラー衛星を利用したトランジット観測とそこからの追観測によって発見当初は最も地球に似た環境の系外惑星、第二の地球の最有力候補と言われています。
さてこの系外惑星がどれくらい地球に似ているかと言いますと、これまでの観測でわかっている事は主星(ケプラー452とカタログで名前がついています、bが惑星を指します)がかなり太陽に近い温度・大きさ・質量です(10%程度太陽より大きいくらい)。そして惑星の方はサイズが地球の1.5倍くらい(質量は3.3倍以下と推定)で主星から約1.05天文単位(太陽~地球が1天文単位)、軌道周期385日くらいとほぼ地球と同じ状況なんです。つまりハビタブルゾーン内に位置している可能性が高いです。但し、このトランジット観測からケプラー452bに関して分かる情報はかなり物理的なところだけに限られています。これは現在の観測技術と観測手法の限界があるためです。
系外惑星のトランジット観測というのはケプラーだけでなくTESSの成果もあり数千個以上の系外惑星を発見しています。ただそれでもケプラー452bというのは、太陽系・地球の類似性という点だけを見ると、ほとんど見つかっていない組み合わせなのです。下の図はケプラー衛星によって発見されたハビタブルゾーン内に位置していると考えられる地球型惑星の一覧(©️NASA/Ames/JPL-Caltech)になりますが、太陽より晩期型(温度の低い)K,
M型星では複数見つかっているものの、太陽と同じG型では当時ケプラー452bしかなかったんです。ちなみにこういったハビタブルゾーン内に位置すると考えられる地球型惑星は引き続き進められているトランジット探査によってもう少し増えています。
さて地球と似たような状況で必ず生命が誕生するのかについてですが、理論だけでは非常に難しい問題です。不確定要素が多いので、生命はあってもいいしなくてもいいような状況(仮定)はなんとでもなると思います。例えばケプラー452の系は太陽系より少し歳を取っているみたいなので、火星のように昔は海があったけど干上がってしまった、みたいな可能性もあり得ます。なので、地球外生命を観測・探査などで見つけるのがこの議論を大きく進めるファクターになるんです。
そして本題のケプラー452bに生命がいるかどうかですが、いるかもしれないし、いないかもしれない。残念ながら現在の観測装置だとそこまで判断できるほど精度の高いデータを得ることできず、第二の地球と言うのは時期尚早です。地球っぽい物理的な性質を持っていることだけは分かっていますが、そもそもこの惑星に今大気・海があるのかも分かっていません。第二の地球と解説するメディアなどを僕もたまに目にしますが、興味を引くようなタイトルを使っているだけです(誤解を生むような表現はやめてほしいですが。。)。とはいえ現時点でも将来的な地球外生命探査の上で非常に有望なターゲット、第二の地球の有力候補である事には変わりありません。
ケプラー452bを含めハビタブルゾーン内にあると考えられる惑星において大気・海や生命がいるのかどうか、そういったところを具体的に議論できるような観測装置を今後10年~20年で完成させ、観測的な証拠を見つけられるように天文学者は日々研究を進めています。長いと思うかもしれませんが、逆にこれまで長い人類の歴史で全く分かっていなかった地球外生命に迫るチャンスがそれだけ近づいていると思って気長に待っていただけたらと思います。
もしくは研究の最前線に参加していただけるのでしたらご一報ください、色々将来計画について議論しましょう!笑