青木俊明:非常に面白い状況設定だと思います.
おそらく,ランクサイズルールや中心地理論などがより適応しやすい状況になるため,そうした都市分布になる可能性はあると思います.ただ,20万人規模の都市が増えるかどうかについては,交通ネットワークの整備の仕方にもよるので,やや慎重にならざるを得ないでしょう.また,独自の文化圏が形成されやすくなるかについても,慎重に考える必要があります.
地域文化とは,その地域で生きていくために(適応するために),規範化された考え方や行動だと考えられます.このとき,適応性の対象となるものは,気候特性を含む「地理的特性」だと考えられます.地域で適応的に生きていくために(サバイブするために),特定の行動様式が形成されることは,和辻哲郎先生の「風土」でも述べられております.これが生活様式として具現化する様子は,芦原
義信先生の「街並みの美学」からもうかがえます.つまり,単純にフラットな地域が広がっているだけでは,文化的な多様性は生まれにくく,「差を生じさせる要因」が必要になります.たとえば,広大な平野であっても,気候特性が多様性に富んでいるのであれば,多様な地域文化が生まれる可能性は十分にあるように思います.
いずれにしても,ご質問は,都市計画の専門家であれば,1度は考えたことのある話題だと思いますし,都市計画の専門家の雑談の席でもしばしば話題にあがります(しかも,結構,盛り上がります).こうした疑問は,知識の整理や理解を深める上で,非常に重要な問いだと思います.