矢代 航(Wataru Yashiro):人の人生は人それぞれなので、参考程度なのですが、私個人の経験を書かせていただきますね。
「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」と言いますが、40代前半というと、仕事に追われて新しいことを学ぶ時間もなく、世界中を見渡せば、自分よりすごい人はたくさんいて、自分はこのまま進んで先があるのだろうか、と思ったりもする時期でした。「できること」も経験とともに増えてくるので、やりたくなくないけれども周囲からできると思われて依頼される仕事も増えてきたように思います。
私の場合、私ができることで、他人から求められたことは、理不尽なことを除いて、すべて引き受けました。その結果、「できること」もさらに増えていき、そのうちに、よくよく考えてみると、世界中で自分以外にできる人がいなそうな、価値のあるテーマに取り組めるチャンスが目の前にあることに気がつきました。幸い、そのチャンスを活かすことができ、もちろん今でもやりたくない雑用は多々やっていますが、「やりたいこと」に使える時間がちょっとだけ増えた気がします。
私の仕事は教育・研究で、「やりたいこと」にひたすら突き進むドラマティックな研究者のイメージとはおよそかけ離れた人生ですが、人生というものは「やりたいこと」ができないときに何をしたかで意外に決まるのかもしれません。「やりたいこと」ができるようになるチャンスが巡ってきたときに、十分に準備ができているかどうかかな、と思います。