パットナムの言うsocial capitalは「社会関係資本」と訳した方がしっくりきます。「社会資本」だと道路や線路などのインフラと受け取りかねません。

社会関係資本のデメリットをパットナムは「ダークサイドの社会関係資本」と名付けています。関係性のネットワークが、他者を束縛したり、脅迫したり支配するような形で利用されることですが、さらにネットワークが流動性を失い、閉鎖的になれば、容易に社会や階層の固定化、あるいは新しいアイデアの発展を困難にしてしまうことが予想されます。

他方、「必要以上に他者と干渉しない」というメンタリティを好む方向性は、たぶん社会関係資本の議論とは別です。

他者のプライベートに関与しない、また関与されることを「うざく」感じることを、30年も前に大平健が「ホットな優しさ」と「クールな優しさ」を区別して読み解いています(『やさしさの精神病理』1995年)。世の中がクールな方に移行してきたという洞察です。社会関係資本は他者や制度に対する信頼を問題にしていましたが、クールな優しさは、他人を助けようとして、心の中に踏み込もうとするかどうかという、もっと内面の話です。

1 year ago

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