Jun Mukai:べつに再利用する方法はなくてもいいし、サービスを終了させてもいいし、むしろ失敗を認めて先に進む方がよいと思います。
私が日本を離れてからこの「ブーム」が起きたようで、たまの帰国で不思議な気持ちを味わっていました。渋谷とか秋葉原とかを仮想空間に再現してそこにVRで訪問できる、といった広告を見かけて、すごいと思うと同時にどれくらい見に行く人がいるものか疑問に感じていました。こういう施策についての質問であるとして回答しますね。
まずメタバースという言葉にはいろいろ含意が多くて定義も曖昧ですが、VRによる仮想空間での交流という意味では、ユーザ数的にはそれほど大きく増えているわけではないけれども、減っているということもないという状態である、という認識でいます。一部の人は使っているが、大半の人には広がっておらず無関係ということです。つまりいまだかつてメタバースは「ブーム」になったことはないでしょう。強いて言うなら以前のセカンドライフが盛り上がっていた頃のほうがブームともよべる状態なのではないかとすら感じます。
しかし一方で、なぜか(日本の)地方行政などのセクターにおいては一種のブームが起きており、様々なバーチャルサービスが誕生していた、ということであると理解しています。そして、そもそもユーザ数が多くないことに気づきはじめてブームが収束しつつある、というのが現状なのではないかと思います。
私はとくに感傷的な気持ちにはなりません。地方にいくと、よくわからないお金の出処にもとづくよくわからない巨大施設やオブジェクトがよくあります。こういうものは「箱物行政」としてよく批判されます。ここでいう「メタバースブーム」というものは、対象が仮想空間なだけで構造的には完全なる箱物行政と同じでしょう。物理的なスペースをとらないぶん、邪魔にもなりづらいしさっさとやめて消滅させるほうがよいのではないでしょうか。
再利用とかは考えるだけ無駄というふうに思います。箱物行政と同じであれば場合によってはうまく再利用できるケースもあるということになりますが、ケースバイケースですし簡単にはいきません。それよりはさっさと「取り壊す」ほうがマシでしょう。取り壊しが簡単なのが仮想空間のいいところですし。
それよりは、こういう施策がどうしてうまく行かなかったのか、なぜうまくいくと思ってしまったのか、次に似たような施策を採るときの注意点はなんなのか、そういうことに気を配っておくほうが良いのではないかなぁと思う次第です。
もちろん(私はいまだ懐疑的ですが)メタバースのブームがほんとうに起きて沢山の人が仮想空間に行くようになるときが来ると信じて、そのための下準備を続けるべきという考え方もあるでしょう。であれば再利用などは今は考えなくてもよくて、淡々と最低限の維持管理だけしておくのが良いということになると思います。