小田部正明 (Masaaki Kotabe):市場・技術環境が安定してる場合、企業の運営管理が定型化(ルーティン化)されれば効率が高まり利益率も上がります。つまり、企業は基本的にこのルーティン化を求めています。ところが、第二次大戦後の国際自由貿易の発展により、1960年以降、世界市場・技術環境の変化が激化しました。企業はこのルーティン化した内部企業運営だけでは十分でなくなり、常に環境の変化に戦略的に対応しなければならなくなりました。ルーティン化した企業運営に長けた管理者が、必ずしも不確実性に満ちた環境変化にうまく対応して企業戦略を立てられるとは限りません。そこで経済、政治、技術、文化、法律、宗教等の幅広い知識の複雑な相互作用を理解し、それを戦略に反映できるように外部の専門家に頼り始めたのがコンサルティング企業の始まりです。この専門知識の「外部」調達化が顕著になったのは、アウトソーシングの盛んなアメリカです。同時に(またその一環で)、アメリカではビジネススクールが台頭してきました。コンサルティングの仕事は著名なビジネススクールの先生が副業としてし始めたのが最初でしたが、著名なビジネススクールでMBAを取得した卒業生もコンサルティング会社に次々に入社していきました。McKinsey,
Boston Consulting Group (BCG), Booz Allen Hamilton,
PricewaterhouseCoopers等が代表的な(アメリカの)コンサルティング会社です。BCG Growth-Share matrix、McKinsey
7S等はコンサルティング会社の名前で知られる戦略フレームワークとして一般に知られるようになり、またPorter’s Five
Forcesはハーバードビジネススクールの教授の名前で知られるフレームワークです。また3Cs (corporation, competition,
customers)は、以前McKinseyに籍していた日本人の大前研一氏が紹介したフレームワークです。このように、コンサルティングをする大学の教授やコンサルティング会社が紹介した戦略フレームワークは現在でも使われており、ビジネスコンサルティングの影響力がうかがえます。