Keisuke Fujii:超伝導は抵抗なく電流が流れる物質で電磁石などに応用されています。また高温でも超伝導物質が実現すれば送電線でのエネルギーロスなどが減らせれるかもしれません。そう言ったイメージで省エネなイメージがあるのかもしれないですが、量子コンピュータの制御には超伝導でできた量子ビットにマイクロ波という電磁波を当てる必要があります。量子ビット自体は冷凍機に入っていて微弱なマイクロ波で動作しますが、その元となるマイクロ波の発生は冷凍機の外でやっており実際に量子ビットの操作に必要なエネルギーよりも多くにエネルギーを必要とします。ただし従来のコンピュータよりも特定の問題に対しては圧倒的に早く答えを見つけれるので、答えを見つけるまでに必要なエネルギーという点では問題によっては量子コンピュータに方が省エネということはあるでしょう。Googleが2019年にやった量子超越実験は1台の冷凍機と数万ものノードを持つスーパーコンピュータなので量子コンピュータの方が消費エネルギーが圧倒的に少ないです。ただこれは意味のないベンチマークタスクですので、意味のある計算で量子コンピュータの方が省エネという結果まではまだ到達していません。今後量子コンピュータが大型化すれば消費エネルギーも増加すると思われますが、もっと省エネな量子コンピュータの制御の仕方を無つけないと熱雑音に弱い量子コンピュータはちゃんと動作しない(冷凍機で冷やす能力を越える)と思います。他のアプローチでも既存のコンピュータでも簡単に計算できる問題において量子コンピュータで計算すれば省エネということになるのは難しいかなと個人的には思っています。最後に、量子コンピュータに至る研究の歴史の中ではエネルギーを消費せず計算はできるか?という学術的な問いかけがありました。物理によるとエネルギーが消費されるのは不可逆なプロセスがある時なので、可逆な操作だけでコンピュータを作ればいいとなり、可逆な物理法則である量子力学を使おうとなったわけです。このため、量子コンピュータは省エネという言説が残ってるのではないかと思います。