篠田くらげ:まずロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』をおすすめします。岩波文庫版ではベートーヴェンが聴覚を失い自死しそうになったときに書いた「ハイリゲンシュタットの遺書」を読むことができます。偉大な人間が苦しみの果てに再び生を掴む様が胸を打つでしょう。「歓喜の歌」の聴き方も変わってくると思います。
もう一つは正岡子規の『病牀六尺』です。病に倒れた俳人・歌人正岡子規が書いたもので、苦しみの中に喜びや意味を見出そうとしているところに惹かれました。一方で正岡けっこうわがままだなと思ったりして、それはそれで興味をひかれます。
人生のどん底にいるとき必要なものは、ポジティブなメッセージではないと私は思います。人生に苦しみ、抗い、それでもなお生きようとした人間の記録があなたを支えてくれますように。