青木俊明:言わないですむのであれば,言わない方が良いと思います.心理学には,「予言の自己成就」という有名な理論があります.
これは,「口にしたことが巡り巡って実現してしまう現象」を意味しています.お尋ねの例に関連して考えれば,「死にてー」と言ってしまうことによって,周囲の人々に「あの人は死にたいらしい」という噂が立ってしまい,「本当に困ったこと」があってもなかなか周囲の人が助けてくれず,「期せずして死に追い込まれてしまう」ということが生じ可能性があります.
また,近年では,口にしたことや表情などに脳が反応してしまい,「死にてー」と呟いたり,そうしたことを考えると,それに関連した情報に目がいきやすくなることも報告されています.そのとき,「本当は死にたくない」と考えていれば,認知的不協和という現象が生じると考えられます.認知的不協和という現象は,「同一人物が,同時期に異なる二つの認知を所有した際,心理的な葛藤が生じ,どちらかの認知を採用しようとする傾向」を意味します.つまり,「死にてー」と呟いていると,死に関する情報が集まってきてしまい,そのような情報ばかりを目にすることになり,それでも呟いていると本当に死を真剣に考えざるを得なくなる事態が生じる可能性があります.
もちろん,ちょっと呟いたからといって,すぐにこのような状況が生じるわけではありませんが,敢えてネガティブな状況を招く行為を続ける必要もないように思います.そのため,個人的にはお勧めしにくい行為になります.