白井さゆり:米国の民主党と共和党の対立は多くの分野で激しくなっており、このためよりよい社会・経済を目指して一貫性のある政策がとれなくなっています。たんに意見の違いを表明し議論をしてそこからひとつの政策を実現していくことが難しくなっています。最高裁判事の任命から中央銀行FRBの人事、宗教・人種・性的志向や所得格差・貧困をめぐる政策、米国政府のESG推進政策に対する反ESGキャンペーン（共和党の強い州では地方公務員の年金運用の扱いでESGを重視する資産運用会社を排除などを含む）などを含めあらゆる角度で対立がぬきさしならないほど大きくなっていると感じています。欧州を含め世界は多国籍国家が多いですが、米国のようなはげしい分断はまだ多くはないと思います。 とくに気候変動は世界的課題でいま対応をしてかないと温暖化・大自然災害・生物多様性の損失をはじめ大きな問題に私たちは直面すると思います。米国でもすでに毎年温暖化も一因とみられる大自然災害が激化していますが、共和党中心の州ではだからといって気候対策を強化することにはつながっていません。分断の度合いは各国の政党の支持率や政党間の政策の違いとそれに対する世論の支持率などを見るとよいと思います。米国は二大政党でかなり意見の相違があると思います。気候変動に関してになりますが、以下のコラムをご参考にしてください。https://rief-jp.org/blog/133842?ctid=33

小田部正明 (Masaaki Kotabe):民主主義が上手く稼働するためには、の高所得層と低所得層の間に大きな中間所得層（つまりミドルクラス）がある事が必要だと良く言われています。大きなミドルクラスが無いと、上・下級層の乖離から起こる諸々の社会問題をおさえるバッファー（緩衝）が無くなってしまうからです。高所得層がお金で政治を握り、彼らの都合の良いような政治政策をとるようになってしまうからです。例えば、高所得者の所得税を下げ（低所得層の所得税は下げず）、金持ちが益々金持ちになり貧困な人達は益々貧困になるとか、社会的なインフラの整備に関しても、高所得層の多いところに公園、学校、高速道路等の投資をし、低所得層に居る所はないがしろにされてしまうとか不平等な制度ができてしまう可能性が高くなります。ミドルクラスの人達がその中間に入って両方のバランスを取ることによって民主主義が保たれます。 この所得分布を上手く計算する方法にジニ指数と言うものがあります。ジニ指数の範囲は 0% ～ 100% で、0 は完全に均衡な所得分布を示し、100 は完全に不平等な所得分布を表します。因みに、2019年のジニ指数は、スロバキアが世界で一番所得格差が少なく（24.2）、デンマークもかなり所得分布が平等で（26.5）、ドイツが34.8、アメリカが41.5となっています。日本は44.2です。ジニ指数が50を超えるとかなり所得格差が顕著だと言われています。ジニ指数の非常に高い国としては、南アフリカ（65.4）、メキシコ（64.3）、チリ（59.8）、インド（57.1）等です。ところで日本のジニ指数は現在44.2ですが、1980年代初頭には約31だったことを考えると、日本は1980年代以降徐々に国民の所得格差が大きくなってきていることが分かります。 更にアメリカの場合は、2大党派の民主党・共和党の政治的見解の極端な分立化ばかりでなく、民主党主流の州と共和党主流の州との間での違法移民、妊娠中絶、銃所有等に関する州法の乖離、そして白人の黒人へ対する差別が警察の残虐行為等を通して顕著になってきている事などが、アメリカの分断社会化が顕著になってきている。