菊澤研宗:ルノーでカルロス・ゴーンの過大な役員報酬をめぐって、主要株主であるフランス政府が株主総会でノーを突き付けたようなことは、株主会社である限り、東京電力や日本郵政でも起きる可能性はあると思います。
しかし、役員報酬に関して、一部誤解があるように思います。それは、欧米企業と比べて、日本企業だけが異常に役員報酬が安いという認識です。正確にいえば、逆です。米国企業の役員報酬だけが異常に高く、実はフランスやドイツなどヨーロッパの企業は日本企業と似ていて役員報酬は異常に高くないと思います。したがって、ゴーン氏の米国企業並みの法外な役員報酬をめぐって、フランス政府がノーといったのも理解できます。
ゴーン氏は、おそらく米国企業並みの役員報酬をイメージしているのに対して、ルノーと日産はフランスと日本の企業ですので、そこに何か根本的な齟齬があり、それが問題を生み出した可能性もあるように思います。
一般に、日本企業の経営者や欧州企業の経営者は、この点を理解して行動していますし、日本企業の場合には、とくに大株主には事前に根回しているので、大株主(政府)からノーを突き付けられるような事態は、事前に回避しているように思います。