鵜山太智:我々のいる宇宙に地球以外の生命、知的生命を持つ惑星は存在するのか。
これを解き明かす事は天文学者だけでなく、人類の夢の一つと言っても過言ではないと思っています。単純に地球に人類がいるので、天の川銀河に限定しても知的文明の数は0ではなく1である事は確かです。なので、他にあってもおかしくないだろうと考えるのが自然ですが、じゃあ具体的な数はどれくらいになるのかというのが非常に難しいところです。
研究者としての立ち位置から質問に答えてしまうと、36という数字を肯定も否定もしません(できません)。データが少なすぎるので、例えば1億の文明があるという突拍子もない事を言われても、矛盾しない仮定をきちんと示して再現性のある計算結果を出す事ができていれば、否定する材料が足りなくなるためです。
ただ個人的な意見として、(地球を除いて)0であってほしくはないし、もし36も天の川銀河に文明があっても地球からは全て見つける事はできないかなあと思っています。
ちなみに質問には研究結果の一次情報(論文など)が見当たらないので36という数字がどうやって導出されたのかわかりません。2つほど理論的な手法ですがどうやって推定するのか紹介させていただきますね。
* 人類以外の知的生命について考える上で有名な式: ドレイク方程式というものがあります(参照: 天文学辞典
https://astro-dic.jp/drake-equation/
)。パラメータが7つあるのですが、このパラメータは観測からほとんど制限されておらず、仮定さえ変えれば期待値(N)はどうとでも変える事ができてしまうので、方程式に意味はあるものの、仮定に使われる値に議論の余地がありすぎるので信用できる値を出すのは難しいです。
* 宇宙で生命現象が起きる確率(知的生命体より前の段階)を科学的に検証したという研究成果が数年前に発表されています(参照: 東京大学プレスリリース,
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6688/
)。こちらでは、生命が生じる確率は0ではないものの非常に小さく、地球外知的生命体どころか地球外生命すらほとんどいないのではないかという示唆が与えられています。
仮定まではわからないですが、36という数字は前者で出せ得る値だと思います。後者では宇宙全体で地球以外ほぼ0と言っているので、36もの文明は生み出せません。より現実的な科学現象を元に議論しているのは後者ですが、こちらも様々な仮定を組み合わせたものなので、どこかにずれがあるかもしれず、絶対的な予測というわけではありません。
地球外生命を見つけるというところがこの議論を大きく進展させる鍵の一つです。今後の天文観測や太陽系内探査機によって数十年以内に地球外生命の兆候(例:
植物由来の光合成)が見つかるかもしれないと期待されています。そうなると、地球外生命の議論だけでなく、地球外知的生命への期待も高まると思います。