稲垣雅仁(Masahito Inagaki)| 理学博士(Ph.D., Science):大学で有機合成に取り組んでいる研究者です。
有機反応機構は、電子の流れを、矢印を用いることで示し、化学結合の切断•形成を表すことで化学反応を理解する手法と言えます。この有機化学反応を理解するために矢印を用いた電子の授受により表せること(有機電子論(1932年))を提唱したのはR.
Robinsonです。しかしながら、この有機反応機構は、有機反応を体系化し理解するための手法であり基本的には仮説にすぎません。実際には、提案した反応機構が矛盾なく説明できるかどうかを、様々な実験を行い実験結果と照合わせて確かめる作業が必要です。有機反応には様々な種類があることから、一つの実験で反応機構を解明することはできません。複数の実験手法を駆使し、その反応機構を明らかにする研究が行われます。具体的な実験手法の例としては、反応速度論解析、結晶構造解析、遷移状態解析(量子化学計算)、同位体標識法、時間分解分光法、などが挙げられます。これらに関し詳しく知りたい場合は以下が参考になると思います。
• 反応速度論解析、結晶構造解析、遷移状態解析(量子化学計算)などについて
https://www.chem-station.com/blog/2015/03/mechanisticstudies.html
https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/2013J_5.pdf
• 同位体標識法について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/18/3/18_3_146/_pdf
• 時間分解分光法について
http://apchem2.kanagawa-u.ac.jp/iwakuralab/research.html
その他一般的なことについて
• P. Sykes 著、久保田 尚志 訳、有機反応機構〔第5版〕(1984/01/25)、東京化学同人
• 島村、稲本、実験化学講座13トレーサー技術p145(1957)、丸善
• 島村、稲本、有機化学ハンドブック(新版)p456(1959)、技報堂