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大学生の年齢で「何だかいつも物足りない」というのは決して珍しい感覚ではないと思います。あなたがどうしたらいいかはわかりませんけれど、あなたのご質問を読んで思ったことを書きます。

質問文から、あなたが感じる「物足りない感覚」は良くないというニュアンスを感じます。良くない状態だから、何らかの意味で解決したいというニュアンスです。でも、私は必ずしもそうではないと思っています。

といっても、あなたが「物足りない感覚」を持つこと自体が良いことだといいたいわけでもありません。私が思っているのは、あなたのその感覚があるおかげで進むものがあるかもしれないということです。雑な比喩を使うならば、お腹が減っているからこそ食べ物を求めて歩き始めるという意味に近いです。

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「足るを知る」ことは確かに幸福につながっていると思いますが、そのために必要なものとして「自分を知る」ことがあるのではないかと思います。私とは何であるか。自分とはどんな存在であるか。私はいったい何をしていけばいいのか。自分の心や身体や頭を使って、この世に生きているあいだに成すべき活動は何なのか。私はどこに向かって生きればいいのか。そのような実存的な問いの答えを求める。それは自分を知ろうとする態度につながります。

あなたがいくつか書いてくださったこと、「自分は恵まれている」「浪人させてもらった」「一人暮らしもさせてもらっている」「お金を使って何かを買う」といったことは、すべて「あなたという人間そのもの」とは無関係です。無関係は言い過ぎですけれど、あなたの奥底に結びついているものではないという意味です。

自分の心の深いところにつながっている「何か」を見つけること。あるいは見つからないまでも探し求めること。自分の土台となる「何か」に触れること。そこにしっかりと足を乗せ、ふんばること。

私の想像ではありますが、あなたの抱く「物足りない感覚」はそういった「あなたという人間そのもの」を見つけることへとあなたをうながす力となるものではないでしょうか。

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抽象的な話に終始してしまいましたが、私が思うことをざっくりと書きました。「物足りない感覚」というのは、あなたが「あなたという人間」を探し求めるために必要な、大事な感覚ではないかということです。

何を訳知り顔に語っているかと思われるかもしれませんが、私自身(そして多くの大学生くらいの年代の方々が)同じような思いを抱くからです。実存的な問いが心をゆさぶるのです。

私自身はクリスチャンとして生きることの意味を通じて多くのことを知りましたし、本を書くという仕事を通じて自分とはどんな存在なのかを知ることもたくさんありました。もちろん愛する人との出会いなども大きな意味を持ちます。

あなたの場合に何をどうすればいいのかまではわかりませんけれど、以上の回答が何かのヒントになればうれしく思います。

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結城浩

EngineerWriter

本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。文章を書くこと、学んだり教えたりすること、プログラミング、数学、人と人とのコミュニケーションなどに関心があります。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。アマゾンの著者ページは https://link.hyuki.net/amayuki にあります。なお、私は数学読み物を書いていますが、数学科出身でもありませんし、数学の研究者でもありません。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。〔ゆうき・ひろし〕