川原繁人:大学生の時に卒論という大きなプロジェクトに取り組むことには意義があると思います。ひとつのテーマに関して自分なりに過去の文献を調べ、自分なりにまだ解明されていない疑問を見つける。そのことによって過去の研究に対して何か新しいことを付け加え、その過程を論理的に伝えられるように書きあげる。自分ですべてを解明できなくても、自分のやったことで新たな疑問が湧いてくる。もしかしたら、その疑問が次の研究につながるかもしれない。この一連の作業を自分でおこなってみることは、おっしゃるとおり損な経験ではないと思います。
ただ、大学の卒業のために「論文」という形を取らなければならないのか、というとそれも疑問に思ってしまいます。それこそ楽曲を制作したり、小説を書いたり、歌集を作ってみたり。自ら新しいものを作り出す、という体験ができるのであれば、論文ではなくても良いと思っています。