田口善弘@中央大学:「唯物論と経験批判論」という本ですね。これはレーニンという人が書いた認識論に関する哲学本です。レーニンというのはソビエト連邦の建国の父みたいな人で、ソ連ができてすぐ亡くなってしまったので問題になっていませんが、そのまま長生きしていたら、独裁者としていろいろまずいことをしたのではという評価もある人物の様ですが、そっちは僕は専門じゃないのでわかりません。
この本の内容で僕が一番感銘を受けたのは科学的真実というのは相対的なものであり、漸近的に真実に近づいていくだけであり、時には真実と逆方向に振れることもあるが、長い目で見ればかならず真実にいつか漸近的に近づいていくという考え方です。
科学の学説というのはのちの科学の発展により否定されることもあり、絶対的な真実ではありえません。だとするとその時点で科学的に正しいとされているものをどう評価していいのか、若い頃の僕は結構、悩んでいました。なので「各段階では間違っていてもいずれは真実に淘汰するのが科学的方法論」という考え方は自分が科学者としてやっていくための最低限の指針として非常に役立つものでした。