稲垣雅仁(Masahito Inagaki)| 理学博士(Ph.D., Science):最大のデメリットとしては、反応が不均一な固液反応になるため一般的な有機反応のような均一な液相反応と比較して反応性が低くなることだと思います。私は、固相支持体を用いてデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)の有機合成を行なっています。ペプチドの固相支持体を用いた合成もやったことがあります。その経験から、均一な液相反応では原料と反応試薬は1:1〜1:2程度で進行する反応においても固相支持体を用いた反応の場合、反応試薬類が10当量程度必要になることが多い印象です。また、効率よく反応を進行させるためには、固相支持体の効果的な溶液内拡散が重要ですが、攪拌子などであまり激しく攪拌しすぎると固相支持体が削れてしまうこと、反応溶媒種に対する固相支持体成分の親和性(分散性など)、合成したい分子のサイズに応じて固相支持体のサイズ制御が反応収率に大きく影響することなど、液相反応とは異なった検討事項が挙げられます。