大谷栄治:発光現象の原因としては,様々なものがあり,地震による揺れで電線がショートした時の光,地震による火災の光,地震と同時に落雷があったことなど,地震にともなう被害や地震とは関係していない気象現象がたまたま一緒に起ったケースなど,地震現象とは関係がないものとする意見もあります.しかし,地震にともなって,本当に発光現象が起こっているケースもあります.地震による発光現象が確実に観測されたのは,1965-67年の松代群発地震でした.この地震発光は写真に撮影され,その存在が認められています.地震発光について,科学的に検討している研究者もいます.有名なのは寺田虎彦で,彼は1930年代に,地震発光の原因を議論しています(1).私が納得している説明は,惑星科学会誌に1998年に,高木・池谷によって発表されたものです.地震がおこると電場が発生し,電流が流れる現象があります.地殻の岩石に含まれる石英の結晶には,圧電結晶として良く知られています.この圧電効果とは,結晶に圧力を加えると電位を持ち電流が流れます.逆に,この結晶に電圧をかけ電流を流すと,結晶が伸び縮みして振るえます.このような面白い性質をもった石英が地震によって歪が開放されると,電圧がかかり周囲に電流が流れ,電場が発生します.これが,第一ステップです.一般に大気中には,宇宙線や岩石中の放射性同位体の崩壊起源の放射線(β線)などの自由電子があります.この自由電子が,地震による石英の歪の開放による電場で加速されます.これが第二のステップです.この加速された自由電子が空気中の酸素や窒素の分子に衝突し励起・電離させます.この励起した分子がもとの状態(基底状態)に戻る場合や生成したイオンが再結合するときの発光が地震発光であると解釈しています.このモデルで計算した地震発光は,松代の群発地震にともなう発光現象を説明できるといわれています. 以上のことから,この高木・池谷の説明が私にはもっとも納得がいっている説明だと思います. 参考文献 (1)https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab1912/6/10/6_10_401/_pdf (2)https://www.wakusei.jp/book/pp/1998/1998-1/1998-1-004.pdf(Read more)