熊崎 宏樹:AtCoderでRating2800以上を誇るいわゆるRedCoderは努力の量・発想・地頭・創造性すべての面において尋常ならざるものを持っているのは間違いないですが、それが現在世界で230人ほどいてそのうち何人が注目を集めているでしょうか。ところで富士山は世界で108番目に高い山だそうですが「日本で一番高い山」という肩書のお陰で順位以上の知名度を獲得しています。つまり誰もがエベレストにはなれない一方で、注目を集めるためには異なる戦略が重要という事です。
いろんな人から認知された集積で「大きな注目を集めるエンジニア」はできています。しかし人間の認知能力は有限です、そこで少ない認知負荷で覚えてもらう必要があり、その近道は独自性を手に入れる事です。もっと具体的な例で言うと特定のキーワードで検索したときに上位に出るようポジションを固める事です。
LinuxカーネルのコミッターとかRuby言語を作ったとか、そういう偉業に限らず「特定のアルゴリズム名と言語名で検索すると常に出てくる」とか「特定の攻撃手法で検索したときに日本語の資料をいっぱい出してる」とかそういうレベルからで良いので何かしらの頂点に立つと認知度がグッと上がります。
マイナーなものになるほどその頂点に立つことの知名度インパクトが少ないですが、マイナーかつ人がこれから知りたがりそうな事に関して情報を拡散し続けるのがおすすめです。例えば今からだとLLM(大規模言語モデル)とか画像の拡散モデルなんかは人気が集まってて、Web3やビットコインなんかは相対的に失望期に入ったと思います。
真に研究が重ねられている分野で独自性を出して注目を集めるのは研究と同様に難しいですが、日本人コミュニティの中で注目を集める方法はとても簡単で「日本語で検索して出てこないが英語で検索したら出てくる情報を噛み砕いて解説する」というのが手軽で、学術系の論文なんかはまさにその題材にうってつけで、海外のコミュニティで評判が良い論文やブログを愉快に紹介し続けるだけでその分野に興味のあるフォロワーが勝手に増え続けることでしょう。そのトピック名と自分のアカウント名が紐付けられて認知されるようになったら勝ちです。これも一種のタイムマシン戦略と言えるかも知れません。そしてただ紹介するだけでなく自分でも何か作ってみると専門家が作ったプロダクトとして注目される事でしょう。
トピックと自分を結びつけるのは一朝一夕ではできないので努力自体は必要ですが地頭や創造性などよりは英語力や説明力のほうが遥かに必要となりますし、何よりもそのトピック自体が注目を集めないと意味がないので運要素が大きく絡む事は間違いないです。