大谷栄治:道路の陥没の原因は、地下に空洞ができそれが崩落することによります。地下に空洞ができる原因は、自然発生的なものと人工的なものがあります。また、その両方が原因になる場合もあります。
もっとも身近な陥没は人工的なものです。有名なものは、
2016年11月に福岡市のJR博多駅前で大規模な道路陥没事故が発生しました。これは、地下鉄工事が原因であると考えられています。また、2020年10月に起った東京・調布市の道路の陥没事故は、東京外環道の地下トンネル工事が陥没を誘発する空洞を地下に作ったことが原因であるとされています。このような大規模な陥没事故は、地下掘削工事に伴って発生することが多いのですが、私たちの身近なところでは、道路の下にある下水管路などの地下埋設物を原因とする小規模な陥没が比較的頻繁に発生しています。埋設管などが老朽化すると、穴が開いたり、継ぎ目に隙間ができたりすることで、周囲の土砂が管内に吸い込まれ、その結果として管の周囲に空洞ができます。そして、空洞が大きくなると地盤が支えられなくなり、地上で陥没が起こります(1)。
このような人工的な原因の陥没のほか、温暖化にともなう気候変動や豪雨・洪水などにともなう自然発生的な陥没もみられます。自然発生的なものでは、カルスト地形の地域でよく見られ、地面の下の石灰岩が「地下水の流れで自然に溶けていく」ことで発生することがあります。地下水によって岩がゆっくりと溶かされていくと、やがて地面が急激に崩壊します。豪雨や洪水も地下空洞を崩落させる引き金になります(2)。
また、シベリアのツンドラ地帯の永久凍土にできた巨大陥没穴は、地下にたまったメタンガスが噴出し形成されたものと考えられています。これは地球温暖化により蓋となっていた永久凍土の氷が解け、たまっていたガスが噴出したことが原因であると考えられています(3)。
このような自然が原因の空洞の陥没は、地球上のみならず月や火星の表面にも見られます。月周回衛星「かぐや」は、月の地下に溶岩流が原因の大きな空洞である溶岩チューブの崩落による縦穴を発見しました。さらに、米国のマーズオデッセイが火星表面に7個の縦穴を発見しています。このような縦穴は、地下に溶岩チューブのような空洞が存在し、隕石の衝突、あるいは月震または火星震などによる崩壊によって形成されたと考えられています。陥没による月の縦穴と地下空洞は、月面で起きる微小隕石の衝突や放射線被曝から人間を守ることができます.また,激しい温度差とは無縁で、ほぼ一定の温度が保たれることから月の自然のシェルターとして、月基地の候補地としても考えられています(4)。
参考文献:
(1)https://www.oyo.co.jp/bousai-gensai/001.html
(2)U.S. Geological Survey. "Science of sinkholes: 20 percent of U.S. lies in
susceptible areas." Science Daily, 5 Mar. 2013. Web. 7 Mar. 2013.
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130305155755.htm
(3)https://www.cnn.co.jp/fringe/35166664-2.html
(4)https://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2010/haruyama/