田口善弘@中央大学:新聞記事で恐縮ですが(しかも有料です)
中国AI研究、米を逆転 論文の質・量や人材で首位: 日本経済新聞 (nikkei.com)
「AI論文の『数』で中国の存在感が際立つ」「『質』でも中国が米国をしのぎつつある」とあります。これは昨年の8月の記事です。体感的にもこれはうなずけると思います。一方、ここ数年の間、AIというか深層学習を使った研究でいくつかのブレークスルーと言えるような劇的な進歩がありました。進歩が起きたのは例えば、自然言語処理、画像処理、そしてタンパクの立体構造予測です。3つめはなんのことか分からないと思いますけど。これらの進歩で最初に耳目を集めるような成果を出したのは中国ではありません。いずれも「西側」に属する集団です。その意味ではまだ中国が世界のトップを行っているとは言えないと思います。また、
中国、アメリカの半導体規制巡りWTOに提訴…「世界の供給網の安定脅かす」と主張 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
の記事で問題になっている様に、AIの計算をするための計算機の「材料」である半導体、および、その半導体を作る装置は中国は自力で作れる状態になっていません。計算機がなくてはAIでいくら良い成果を上げても現実に社会に実装することはできません。お問い合わせの件とはちょっと違うと思うのですが、総合的な観点から見るとまだまだアメリカ(とその友好国であるいわゆる「西側」)に一日の長がある、というのが現状だと思います。しかし、10年後には名実とも中国がAI研究でトップになっても誰も驚かないと思います。
日本は非常に遅れています。上記の記事で6位となっています。6位だったら悪くないと思うかもしれませんが、日本の経済力では3位ですし、5位のドイツや7位のフランスは日本より人口が少ないのでとても褒められたものではありません。
CRDS-FY2021-RR-01.pdf (jst.go.jp)
のP52-P53の「(7)国際比較」やP62の「5
学会動向および国際動向」にもうちょっと詳しいことが載っています。日本も手をこまねいているわけではなく「圧倒的な米中二強の後、日本は欧州各国とともに3位から10位の一群に含まれている
が、上記中核研究機関を中心に徐々に論文数を伸ばしつつある」(P46)などと書かれています。