畑中雅美:八方ふさがりと考えてらっしゃるようなんですが、ちょっと視野が狭い気がします。 まずは需要と供給の話をしたいんですけど。 自分一人で話も考え、絵も描ける漫画家は、そもそも原作者を欲しない。 作画家は、もちろん原作者と組んで新作を作ってもいいけど、既に人気の小説やゲーム、ドラマ、映画と組んでもいい。 だから、あなたが就こうとしている「漫画原作者」という仕事には、ライバルの業種がめちゃくちゃ多いということです。 小説家、ゲームクリエイター、脚本家…などなど。 しかも相手は基本、ヒットというバックグラウンドを持っています。 ヒットした小説だから、コミカライズされる。 ヒットしたゲーム、もしくは大企業が巨大な宣伝費を投下する大型企画だからコミカライズされる。 ヒットしたドラマ、もしくは大スターが出る大型企画だからコミカライズされる。 だからシンプルな話、「あなたと組んだら、売れる！」って思わせる必要があって、それさえ突破すればいいわけです。 …なのでおススメは３つ。 ネームの段階で担当編集がついたということは、絵も描けるのでは？ 勿論、あなたの意思で作画は他の人がやった方がよい、ということなんでしょうけど、まずはあなたの能力を世の中に知ってもらうために、自分で描いてみては。 まずは漫画家になってみる、というのが１つ目のおススメ方法です。 イメージとしては、ONEさんの『ワンパンマン』です。 あの作品は元々ONEさんが自分でお描きになっていたのを、村田雄介さんが読者として大好きになって、自分と組まないかと持ち掛けたと聞きました。 ONEさんの例だけでなく、元々ご自身が漫画を描いていて漫画原作者になった方っていっぱいいますよね。 漫画を描くことで、漫画家や作画家に知ってもらう機会を作るという戦略です。 ２つ目は、小説家になる。 漫画原作者の最大の弱点は、一人では仕事が成立しないことです。 作画家も同じではありますが、作画家の方は上述した通り、小説家や他の人たちとも組めますから。シンプルに選択肢が広い。 だとすると、あなたも選択肢を広げるか、一人で仕事を成立させるか。 一人で仕事を成立させるために、小説家になるが２つ目の方法だとすると、 ３つ目は、ドラマやゲームの脚本家や監督になることです。 漫画だけではなく、映画やドラマ、ゲームなどに、あなたも選択肢を増やすんです。 ３つと言いましたが、実はまだまだ無限に方法はあるかと。 要は、自分の能力の使い道を、固定化させないで、ということです。 デビューへの道も、固定化させないでください。 質問を読んで感じたのは、なにか上手くいかないことがあった時に、発想が固定化しやすい方なんだなぁということです。 ・作画家に伝手がないと言われた→作画家を探すも引く手あまたで探しづらい→詰んだ！←今ココ！ って感じなんですけど、 ・作画家に伝手がないと言われた→作画家を探すも引く手あまたで探しづらい→作画家が向こうからホイホイくるようにするにはどうすればいいか？ とか。 ・作画家に伝手がないと言われた→作画家を探すも引く手あまたで探しづらい→作画家がいなくても仕事ができる方法はないか？ とか。 ・作画家に伝手がないと言われた→作画家を探すも引く手あまたで探しづらい→原作者と作画家のマッチングサイトを作れないか？ ※ちなみに、今「原作者、作画家、マッチングサイト」で検索してみたら、普通にジモティーで原作者を募集してる作画家の方とかいましたよ。 なんか無限に方策は思いつきますよね。 何事も、一事が万事だと思っているんですけど、 あなたのネームが既にめちゃくちゃ面白くて、これが世に出たら驚くぞ！！って思うものになっていたら、編集者にしろ、周りの漫画を描く人なり、誰かがなんとかしたいと動いてくれると思うのです。 だから厳しいことを言うようですが、そもそも色々上手くいかない理由は世の中の仕組みというより、ネーム自体にも存在していて、もしかすると、この「固定化」が原因となっているかもしれないです。 最初の発想自体にはきらめきがあっても、そこからの広がりが弱い、主人公たちの考え付くアイディアが狭い等問題を抱えているかもしれません。 世の中の仕組みのせいでも、ネームのせいであったとしても、 どちらにしろ、あなたがやるべきことは同じかと。 発想をもっと拡げてください。 行き止まりになったと思ったら、一旦意識を上空にあげてください。 迷路を上から見る意識を持つ。 行き止まりで他に道がないように見えても、俯瞰して物事をみたら、無限にゴールへの道があることに気づく。 そんな風に考える癖をつけてみてください。