渡辺浩弐:生産能力や生殖能力を失った人間の社会的価値として、これまではその情報アーカイブとしての役割が掲げられていたわけですが、AIの出現によってそれも決定的に失われるようです。
ただ「50歳になったぞ、ほな死ぬわ」とは、そう簡単には、なりませんよね。これも、種族維持本能と個体維持本能のバランスの問題です。
個人的な話をしますと、歳を取るにつれ「死ぬのがこわい」という感覚はどんどん減っていきます。まもなくゼロになったら笑って死ねるはずなんですが……かなり遅いですね。昔の人は40歳や50歳くらいでその境地に至ったと思います。