竹村俊彦:大雑把には、気象学は物理学に、気候学は地理学にそれぞれ含まれるということになると思います。したがって、気象学は理系的アプローチ、気候学は文系的アプローチをとる、とも言えるかもしれません。
しかし、両者の違いを細かく定義しようとすればするほど、境界があいまいになってきます。例えば、「ケッペンの気候区分」というのは地理の教科で出てきますが、その分類の要素となる気温の高低や降水量の大小を説明するためには、物理学の知識が必要です。また、気候学で中心となる解析手法となる統計的アプローチは、気象学でも当然用いられます。
さらに、現在では、人間が引き起こす「気候変動」が国際的な社会問題となっています。「気候」変動ですが、その理解のための基盤となるのは気象学です。かつ、気候変動の問題には、政策や経済など、文系的要素も当然含まれてきます。
従来「○○学」と分類されていたものの境界があいまいになったり、複数の学問が融合したり、ということが、いろいろな学問分野で起こっています。ちなみに、私が主宰している研究室の名称は「気候変動科学」と「気候」が使われていますが、対象とする現象を従来の学問領域で分類するならば、物理・化学に含まれる気象学です。手法はコンピュータシミュレーションなので、計算科学という学問領域にも含まれます。