質問の意図を次のように想像しました。「1/3という数を十進法の位取り記数法で表現するなら、0.333... のようになる。3がずっと続くというのがどうもしっくり来ない。では具体的な物体で考えるなら答えがはっきりするだろう。雑に1/3してもしょうがないので、可能な限り(たとえば分子レベル)で正確に1/3にすれば、0.333...の正体がはっきりするのではないだろうか」
質問の意図が上に示したものであると想像した上で回答します。
まず短く答えると、1メートルの紙を分子レベルで正確に3等分したなら、そのうちの一つ分は分子レベルの誤差を残しつつ1/3メートルになると思います。つまり1/3メートルなのだけれど分子の大きさ程度の誤差はあるという意味です。
「0.333...の正体がはっきりするかと思ったのに1/3でお茶を濁された」と感じると思いますので、補足説明をします。
まず、0.333...というのは気持ちとしては3が無限に続くわけですけれど、それはたまたま十進法の位取り記数法という表記法を選んでいるからであって、別の表記法を用いるならば無限などは登場しません。実際、1/3という分数表記をすれば無限はどこにも出てきません。0.333...が何となく気持ち悪いのはたまたま十進法を選んでいることと、10が3で割り切れないことに寄るのです。たとえば三進法の位取り記数法を選ぶなら、1/3は0.1と表記できます。
(もう少しいうならば、0.333...という表記は極限値を表現しているといえ、表記をちゃんと理解するためには極限の理解が必要になります。ただ、0.333...という表記が表している数そのものに無限が直接的に関与しているわけではないといっていいと思います)
それから、分子レベルで紙を正確に三つ折りにするという思考実験で「何を確かめようとしているか」はよく考える価値があると思います。紙という物理的なものを使って1/3という数の数学的性質を確かめようとしているならば、それは不適切です。どちらかといえば紙を分子レベルで三つ折りにできるかという思考実験では「分子レベルの長さとは何か」の方を確かめる思考実験になるのではないでしょうか。ここから先は私には答えられませんが、分子レベルになると量子的な振る舞いが顕在化するので、正確な長さを表現するのは難しいと思います(もっとも、量子的な振る舞いを持ち出すまでもなく、物理的な測定では常に測定器具の誤差の範囲でしか長さは表現できないわけですけれど)。
私からの回答は以上です。出発点が私の勝手な想像から始まっていますので、もしもあなたの質問意図が違っていたらごめんなさい。
* * *
なお、著書の宣伝になりますが「0.999...」という表記の意味、ならびに「0.999... = 1」という等式の意味については、以下の本で詳しく解説されていますのでよろしければどうぞ。
◆書籍『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』(結城浩)
https://www.hyuki.com/girl/goedel.html
以下の本でも解説しています。こちらの方がやさしい内容です。
◆数学ガールの秘密ノート/数列の広場 | 結城浩