テレビを視ていただき、ありがとうございます。さて、ご相談の件ですが、哲学者のマルクス・ガブリエルが『わかりあえない他者と生きる』(PHP新書)の中で親子関係について論じています。親子の倫理は、「中立的な他者性の知を創造すること」だというのです。簡単にいうと、親と子は、生まれた瞬間から他人だと思い、お互いがうまくやっていける関係を創造していきましょうということです。よくいわれることではありますが、それを実践するのは大変です。この場合の実践には二段階あると思います。まず、親を心から他人だと思うことです。そのうえで、あたかも他人のように接することです。他人だと思う時は「本心から」、他人として接する時は「かのように」というところがポイントです。なぜなら、親を他人だと思うのは難しいので、それゆえに本気になる必要があります。逆に他人のように扱うのは、連絡を取らないなど意外と簡単なので、そこまで極端にならないようにする必要があります。実際には親子なのですから。完全に他人として接すると、かえって険悪な関係になります。そうではなくて、他人だと思って、気遣いながらコミュニケーションを取るということです。他人だったら、誰しも遠慮するはずです。家族というのは、そういう遠慮がないから腹も立つし、言い過ぎるのです。もっとも、自分だけそうしても、相手が変わらないと意味がないと思われるかもしれません。でも、他人は変えられませんよね。親も同じです。そこで、親は変えられないと思うと絶望を感じるので、他人だと思いましょうということです。他人を変えられないのは当たり前なので、そこまで絶望することはないはずです。あと、自分が態度を変えれば、相手も変わってくるものです。けんかのやめ方は昔から一つだけです。自分がやめることです。