宮野公樹:私は「専門とは何か」について研究するものでして、このご質問には大いに興味があります。今を生きる我々(主に研究者)は、「専門」と聞くと、何か区域や領域のような二次元平面に拡がりをもつものと考えますが、専門は「門」と書くように、入り口であります。どのような切り口であれ、専門は門でしかなく、そこを突き進めれば自ずと他の門からの探求者らと交わることになる・・・ つまり、他分野への関心は、視野や視界の横展開というよりも、むしろ、自身の研究の深化によってこそ自ずとなされるもの、ということなのです。
古代から近代までの西洋哲学、我が国では本居宣長や三木清らの学問観からたどり着いたこの考えは、まだ未熟ではありますがいちおう論考にまとめておりますので、もしよければ。下記より無料で読めます。『学問との再契約
(連載企画 第一回 : 超えるのではなく辿る、二つの文化)』、アステイオン vol.95 (2021年10月) p. 224-230.
追記:
他の先生方も他分野に関して強く興味関心がおありで何よりです。しかし、大多数の研究者はそれほどでもないよなあという感覚をもっています。悲しいかな、今日の学術界においては「学際」がもてはやされているものの、結局は、特定の専門分野に留まり、特定の仲間たちで認めあう業績を大量に生産するほうがよい、とされている現実も否定できないと思います。それはそれで大事なことなのですが、本来、その分野(その研究者)が熟すほど、他分野との接触は余儀なくされるものなのですがね。