高橋賢:私の専門は管理会計・原価計算です。若い頃はその専門の計算構造理論とその歴史的展開をずっとやっていました。ある計算技法の発展を追う上で経済環境の変化,経営環境の変化は不可欠なので,経済史や経営史の勉強も合わせてやっていました。
その研究が一段落し,今度は産業クラスターなどのネットワーク組織の管理会計の研究を始めたときは,産業集積論だとかネットワーク組織論,地域経済論なども勉強しました。そういう知見を基盤としてどのように管理会計システムが構築できるだろうか,と考えたからです。
1つの専門分野を極めるためには,隣接領域の研究が不可欠です。特に私がやっている管理会計論は会計を軸として戦略論,組織論,心理学,経営数学などの隣接諸領域の学問成果をとり入れながら発展してきたという歴史があるので,必然的に(狭い意味での)専門分野を超えた関心を持つ必要があります。