田口善弘@中央大学:ナイフに使われているような場合は、炭素繊維だけではなく樹脂との複合材です。鉄筋コンクリートの中に鉄が入っていることで強度が増しているようなイメージです。樹脂と繊維でまず繊維の方向がそろっており、そろっている方向にはひっぱり強度が強い薄いシートを作ります。次にシートを重ねてから焼き固めて厚い板にするのですが、この時に、繊維の方向がそろわないように注意深くシートを重ねていくことでどっちの方向にひっぱっても必ず繊維の引張強度が有効になるようにしておきます。このようにすることで単体では引張強度しかない炭素繊維で剪断力的にも高い強度を持ち、研いで刃物にできるような材料を作ることができます。
それでも金属に比べるとせん断応力には劣るのでアーミーナイフでよく使われるような「こじ開ける」的な使い方はやめるように注意書きがあるのが普通です。ご指摘の件はちょっと物騒な話ですが、人間を突き刺したり切ったりするような武器的な使い方が想定される用途だったのでは、と想像します。そういう用途なら貫通力が強いカーボンファイバーナイフは有効だと思います。